北海道新幹線vs.JR貨物「青函共用問題」の核心 一時は貨物が青函から撤退、船舶輸送構想も

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青函トンネルを抜け出た貨物列車 線路は新幹線との共用で現在は最大20両編成のコンテナ列車が臨時も含め上下計51本運転されている(撮影:久保田 敦)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2020年7月号「北海道新幹線とJR貨物」を再構成した記事を掲載します。

2016年3月に新青森ー新函館北斗間が開業した北海道新幹線は、引き続き札幌までの建設が進められている。2004年末の政府・与党申し合わせで建設が決まり、翌2005年度に着手された。当初2035年度とされていた完成時期は、あまりに工期が長すぎるとして、財源の算段を経て5年前倒しされ、以後は2030年度とされている。それでもはるか遠いと思っていた工期だが、今では「あと10年」という段階にまで漕ぎつけた。現状、函館までの路線では利用率が低迷する中、人口200万を擁する札幌への延伸は国土軸としての本領発揮が期待されている。

新幹線と貨物列車の共用走行がネックに

だが、効果を最大限に引き上げるには今以上の高速化が求められる。ネックとなるのは、在来線列車である貨物列車と線路を共用する青函トンネルを含めた共用走行区間である。在来線時代と同じであった最高速度時速140kmは2020年3月にようやく時速160km化(青函トンネル内のみ)され、2020年度内には時速200km化が図られる。とはいえ、安全性の観点から貨物列車とのすれ違いを避ける必要ありーーとされたので運転時間帯を分けることとなり、実施は旅客は増えるが貨物は減少するゴールデンウィークや年末年始などに時期を限り、列車も一部に限定される。

この措置を将来的に続けるかどうかについては、議論されるところだ。JR北海道に限らず、北海道も、基本的には恒常的な高速化を望んでいる。だが、そのためには貨物列車の処遇や対策を講じる必要がある。これまで、青函トンネルを共用走行するとの前提で、技術的な方策として時間を区分することのほか、上下線間に隔壁を設けたり、共用区間専用の標準軌貨車の上に現行コンテナ列車を積載して運行する“Train on Train”等が検討されてきた。

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