「大規模無低」を結局温存する福祉行政の大罪

貧困ビジネスの排除は遠のくばかりだ

東京都など自治体側の主張によれば、小規模巡回型は大規模無低以上に支援の質の低下につながり利用者に不安を与えることになるという理屈になる。本当にそうなのか。そこで記者は6月、さいたま市内で小規模巡回型を運営するNPO法人「ほっとポット」の支援現場に2日間密着した。

「やっぱり好きな物を食べたい」

「ちゃんとお薬、飲んでいますか」。ほっとポット副代表で社会福祉士の吉髙湧氏(24)は、利用者の80代男性に話し掛けた。男性はほっとポットが運営する小規模施設「サポートホーム」で暮らしている。

ほっとポットでは社会福祉士が小規模な施設を巡回し、利用者の生活の支援をしている(左が吉髙副代表)(記者撮影)

施設に来てから介護保険につながり、今は月数回、介護ヘルパーのサポートも受けている。吉髙氏は10分程度で生活状況の聞き取りや室内や冷蔵庫内に変化はないかの確認を済ませると、男性を乗せて最寄りの駅まで車を走らせた。

男性は駅前のATMで支給された年金を引き出し、近くのスーパーで昼食を購入した。この日は男性の好物のにぎり寿司を食べに行く予定だったが、体調が優れないからと総菜パンに切り替えた。「やっぱり好きな物を食べたいし、行きたいところ行きたいよね」と男性は話す。

一軒家を5人前後で利用する、小規模なグループホームの形態であるサポートホームは、全室個室。今年で14年目の支援活動だ。現在、市内15カ所を4人の社会福祉士で担当し、19歳から84歳までの利用者の生活を支援している。

吉髙氏は毎日午前中に担当する7カ所40人弱の利用者のうち4~5カ所の利用者を訪問し、彼らの生活状況の把握や援助を行っている。午後は生活保護の申請同行など、特定の利用者からのまとまった時間のかかる相談に対応している。

ほっとポットでは毎月、サポートホームの利用者から居室利用料4万5000円と生活支援料1万2000円の計5万7000円を契約に基づき受領している。生活保護の受給者でも手元に月6~7万円が残る形にしており、大規模無低で一般的な金銭管理や食事の提供は行っていない。

「金銭管理をしたほうが職員は楽かもしれないが、逆に利用者が抱える生活課題や支援のニーズの把握ができなくなる。早期にアパートへの転居につなげるためにも食事も本人に任せたほうがいい」(吉髙氏)。要望があれば、食事準備の支援や献立の提供なども行っている。

吉髙氏が担当する利用者の中には19歳の男性がいる。男性は2歳から児童養護施設で育ち、その後も大規模無低などを転々としてきた。施設暮らしの中で他人の携帯電話契約を複数引き受けるなどで、数十万円の料金を滞納してしまった。昨年末にほっとポットにたどり着いたときには、無一文になっていた。

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