【産業天気図・工作機械】外需軸に高原状態キープ。後半に国内自動車向けの復活期待も

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工作機械業界の2008年度の空模様は、前後半とも「晴れ」と見ている。
 業界団体・日本工作機械工業会によると、07年暦年の受注実績は前期比10.6%増の1兆5900億円と、06年に続き2年連続で史上最高を記録した。それを踏まえて日工会が示した08年受注見通しは「1兆5000億円台」。文字通り解釈すれば、最悪、前期比900億円ものマイナスを覚悟しているようにも読めるが、日工会側は「前期並みが最低限、というニュアンス」(幹部)といい、中村健一会長も「できれば07年のように年央に上方修正したい」と抱負を語るなど、関係者の間では1兆6000億円乗せが十分視野にある模様だ。
 その牽引役となるのは07年度、06年度と同様、やはり外需だ。中国、インドなどの新興国や欧州で需要が引き続き拡大し、サブプライム問題に揺れる米国向けの苦戦をカバー。景気後退懸念が広がる国内市場でも、昨年低迷した国内自動車産業向けに「回復の兆しが見え始めた」(中村会長)。国内自動車が徐々に復活し、連動して金型向けも苦境を脱すれば、これまで軟調だった内需が外需の下支え役に転じる期待も持てそうだ。
 もちろん、振幅の激しい業界だけに楽観は禁物だ。サブプライム問題が世界経済にどう影響するか依然見えないうえ、急激な円高も日本製品の価格競争力を減殺する。ただ、足元の海外受注は1月が前年同月比1.1%減、2月が同3.5%増と堅調。円高についても「鋳物や鋼材などの海外調達の面では、むしろ有利になる」(中村会長)というメリットがあり、それほど深刻な問題にはなりそうにない。
 実際、業界のムードは悪くない。4~6月期受注に関する日工会会員93社対象の3月アンケートでは、「1~3月に比べて増加する」が10.4%、「持ち合い」が80.6%、「減少」が9.0%となった。これらは昨年12月実施の1~3月見通し調査に比べ、「増加」で0.2ポイント増、「持ち合い」で4.0ポイント増の半面、「減少」が4.2ポイント減っている。
 個別の会社を見ると、業界大手のオークマ<6103>や森精機製作所<6141>の08年3月期業績は「会社四季報春号」にもある通り、会社計画よりも強含み。09年3月期も、手広い海外展開が奏功して続伸しよう。大手の中ではアジア圏での失策や国内金型向けの低調で今期唯一苦しんだ牧野フライス製作所<」6135>も、日工会の期待通り、国内自動車関連が再加速すれば、09年3月期は「四季報春号」のを超える立ち直りを見せるかも知れない。
 一方、中堅各社は海外展開の巧拙によって一段と明暗が分かれそうだ。ただ、内需依存度の高いメーカーでも、後半に向けて自動車などの内需が浮揚するなら、横ばいないし、それ以上の結果を残せるだろう。
【内田 史信記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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