電通が約4000億円で英広告大手買収 巨額のれんに見合う投資か疑問の声も
国内広告最大手の電通は7月12日、ロンドン証券取引所に上場している英大手広告代理店イージス・グループを約31億6400万ポンド(約3955億円)で買収すると発表した。電通のM&Aとしては過去最大。イージスは今回の買収に賛同しており、年内にも完全子会社化する。
イージスは世界80カ国に拠点を持つ。東欧や中東、アフリカなど電通が手薄だった新興国のほか欧米で幅広く展開しており、電通にとっては地域的な補完が可能と判断した。また、テレビ広告を中心にマスメディアが収益柱の電通に対して、イージスはデジタル領域に強く事業分野でのシナジーも発揮できるとの算段だ。
電通の2012年3月期、イージスの2011年12月期の売上総利益(粗利)を単純合算すると、地域別の構成比は日本58%、北・南米12%、アジア太平洋地域(日本を除く)12%、西ヨーロッパ15%となる。これまで8割超を日本の収益に頼ってきた電通にとって、海外事業が一気に広がる。電通は国内では圧倒的だが、世界では5位。同8位のイージスを買収しても世界のメジャー4には届かないものの、フランスやドイツ、ロシア、オーストラリアなどではトップ3に躍り出る。
ただ、市場からの評価は厳しい。翌13日の電通株は前日比で一時7%以上下落するなど大幅安。イージス買収をめぐり直近の株価に約45%のプレミアムを乗せる買収資金が高すぎるとの声が投資家から上がっている。さらに実質無借金だった財務体質が巨額借り入れに伴い一転して悪化する一方、シナジー効果がどこまで発揮されるか不透明だからだ。