スマートテレビに未知の可能性、日本に残された逆転の芽 猪子寿之・チームラボ社長に聞く
メールを例に取ると、PCのGメールは件名ごとに受信箱に並んでいるのが一般的だ。このような形になっているのは、仕事の用件で複数の人に一斉送信する際に便利だからだ。一方、友人との一対一のやり取りが中心となるスマホのSMS(ショートメッセージサービス)は、それまで交わしたメールの中身が一覧できるチャットのような画面になっている。メール一つとっても、スマホはこのように違う。しかし、日本メーカーはハードの品質向上ばかりに目が行き、スマホと従来製品とのコンセプトの違いについて理解していなかった。
これは、日本にソフトウエアの世界的な企業が存在しないことに起因する。家電業界はネット分野での競争になっているので、これでは勝ちようがない。いっそ潔く負けを認めて、ネットにつながりそうな家電製品はすべてやめてはどうか。そして日本の強みを生かせるような物理的機能をひたすらに追求していく。たとえば日本製の加湿機能が付いたエアコンや美容家電などはすごい。値段が高くてもつい欲しいと思ってしまう。
--夢がない話に聞こえるが……。
もしネットの世界で勝負するのであれば、会社の中身を完全に変えなければならない。人員もそうとう入れ替える必要があるだろう。変わらず残るのは社名だけといった具合だ。日本にもそれに近い事例はある。たとえば富士フイルムは、写真フィルム会社から医療画像、内視鏡事業を手掛ける会社に変貌を遂げた。IBMもPC事業を譲渡して、ITサービス・コンサルティング企業になった。
そこまでやる覚悟があれば、日本メーカーにもまだチャンスは残されている。特に、スマホの次の主戦場になるであろうスマートテレビにおいては、日本にアドバンテージがあるといえなくもない。