米共和党がシリア難民に拒否反応示す パリ攻撃で移民政策に波紋
[ワシントン 17日 ロイター] - 13日に発生したパリ同時攻撃を受け、米国では移民や国家安全保障に関する議論が再燃している。議員らからは17日、シリア難民への監視強化を求める声も上がり、難民の受け入れ拒否は「攻撃的であり、米国の価値観に相反する行為」とするオバマ大統領への厳しい批判につながっている。
オバマ大統領は9月、今後1年間に少なくとも1万人のシリア難民を受け入れるよう指示しているが、下院の共和党議員らはこの計画に強く反発。民主党も、過激派組織「イスラム国」と関係のあるシリア難民がいる場合に備え、厳しい身辺調査が必要だと主張した。共和党のポール・ライアン下院議長もシリア難民1万人の受け入れの一時中止を主張した。
今回の問題は、「虐げられた移民を歓迎する」という米国のイメージに異を唱えるものだ。一部の議員からは、シリア難民全員の入国を禁止すべきとの主張や、キリスト教徒のシリア難民をイスラム教徒より優先して受け入れるべきとの主張も出ている。
これに対しオバマ大統領は、難民問題で点を稼ごうとする政治家を批判。時折怒りの表情をのぞかせながら「ヒステリー状態で、誇張されたリスクに基づいて判断を下そうとするなら、良い結果は生まれない」と述べ、「このような議論から来るレトリックこそ、ISIL(イスラム国)へ過激派を呼び込む最大の要因だ」と強調した。
大統領によると、難民は米国への入国申請前の1年半―2年間の身元調査をされた後、入国を許可されるという。
マケイン上院議員は?
共和党のマケイン上院議員は、難民に対する慎重な監視を支持しつつ、宗教などによる差別には強く反発。「われわれは皆、等しく神の子だ。キリスト教徒だけ入国を許可するという前提には反対する」と述べた。
上院外交委員会の民主党トップのベン・カーディン議員は、政府はテロリストが難民支援プログラムを通じて米国に入国するのを阻止するよう、監視を最も厳しくすべきだと主張した。1年半―2年間という監視機関は、欧州よりも長い。
米国家安全保障会議(NSC)は、入国者の審査強化を引き続き検討するとしている。
ジョンソン国土安全保障長官を含むオバマ政権の幹部らは17日夜、下院議員435人全員を集めてパリ同時攻撃事件に関する機密扱いの会議を開いた。それでも、多くの共和党員の深刻な懸念は払しょくされていない。
「情報を得ることができない人々を入国させることは非常に心配だ」。共和党のマット・サーモン下院議員は話す。「きょうの会議を終えて、出席する前よりはるかに不安になった」