トラック転落から1年「陥没穴」、周囲の生活は今どうなっているのか――現地ルポ 異臭に騒音…激変した"当たり前"の日常

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埼玉県は2025年8月、陥没現場から“概ね半径200m圏内”の住民と事業者を対象に、補償を提示した。

対象となる事業者に関しては、一律10万円の補償金に加え、事故前後の売上総利益の差額相当分の補填、脱臭機の配布などを盛り込んだ。埼玉県下水道局によれば、26年1月下旬の取材時点で、住民と事業者合わせて計14億円弱の補償を投じたという。

工事現場付近の様子
工事現場付近の様子(筆者撮影)

一方で、聞こえてきたのは、前述のような補償圏外からの声だ。事故の影響は明確に線引きできないなか、画一的な基準で補償の有無が分かれることに、もどかしさを募らせる。

県道封鎖で「銀行に行くのも一苦労」

同じく、補償対象外の県道沿いで、カー用品を販売するスタッフが語る。

「客足は事故以降は減ってますね。景気の影響もあるから一概には言えないけど、売上は少なく見積もって2~3割落ちている。事故現場の県道が塞がったことで、迂回しないとウチには辿り着けなくなったのが大きいね。

電話で『通行止めでお店行けないんでしょ?』と問い合わせも来るので、そのつど状況を説明していますが、全員がわざわざ遠回りしてまで寄ってくれるかというと微妙だよね。ウチは生活必需品を扱っているわけではないから」

件の通行止めとなっている交差点には、4車線の県道松戸草加線(埼玉県道54号線)を中心に、八潮市の市道が合流し、計6差路になっている。埼玉県の三郷・草加方面と、東京・千葉方面を結ぶ広域路線の一角は、生活動線や物流を担う幹線道路として機能してきた。

それだけに通行止めの影響も大きい。交差点裏手の住宅街に住む、70代男性はこう話す。

「私が越してきた40年ほど前は、陥没現場の交差点で、県道は行き止まりだった。それがいつしか道路が東に延伸して、高速(首都高速6号三郷線)にもつながりやすくなった。この辺りに住む人からすれば大事なインフラだよ。

その交差点が塞がったから影響は大きい。銀行に行くのも一苦労で、バスも迂回してるから時間もかかる。あと宅地の歩道を通る車が増えて危なっかしい」

埼玉県下水道局によれば、26年4月を目標に、埼玉県道54号線を暫定的に片側1車線ずつ、計2車線の復旧を公表している。

予定通りに復旧が進めば、人流も回復すると思われるが、現場では客足が戻るのか不安も残る。

八潮市商工会館
八潮市商工会館。埼玉県八潮市内の商工業者にまつわる事業発展と、地域経済の振興を目指す地域経済団体(筆者撮影)

八潮市商工会館が25年3月に実施した、事業者向けのアンケート調査では、半径200m圏外からの影響も報告された。道路迂回による客数減少に加え、風評被害による予約キャンセルの増加や、自粛ムードによりイベントや宴会の中止を嘆く事業者の声が寄せられた。

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