トラック転落から1年「陥没穴」、周囲の生活は今どうなっているのか――現地ルポ 異臭に騒音…激変した"当たり前"の日常
加えて、住民からは副次的な健康被害を訴える声も大きい。
近隣住民が行ったとされるアンケート調査によれば、工事による不眠やストレス、自律神経の乱れなど、間接的な影響を訴える声も多数報告されている。こうした精神的な影響は、より補償を適用する基準が曖昧で、対応も難航を極めるはずだ。
前出の埼玉県下水道局の担当者は、事故と体調不良の因果関係が明確であれば、補償を検討すると答える。ただ現状では、通院代など補償に至った事案はなく、直近では心理士を招いた個別説明会を実施して、医療機関の紹介などを行っている段階だという。
他にも、埼玉県が公開する補償説明会の質疑応答資料には、細かなやりとりも記載されている。
「陥没の影響で下がった不動産価値に関しては対応しない」「家内の家電や装飾品の腐食は因果関係を調査中」など、問い合わせ事例は挙げれば枚挙にいとまがなく、それらに対する行政の回答が追いついていないようにも見える。
補償が必要なのは間違いないが……
事業者や住民からの声を拾うほど、補償の線引きが生む溝や、対応への温度差はあらわになる。
それは特定の誰かを責めて解決するわけではなく、誰もが納得する補償の最適解も定められない。それ故に、不平等さは浮き彫りとなり、派生して不信感や諦念も募っていくように映る。
「変な話、いまは臭いにも工事の音にも慣れたよ」
前出の住民はそうこぼす。その「慣れる」にも人それぞれの度合いがあり、現状を許容できる者もいれば、強い不満を抱えたままの住民もいる。あるいは、深刻な被害を受けた周囲を慮り、声を上げずに耐え忍ぶ人もいるはずだ。
陥没事故から早1年――。今後も数年単位で復旧工事は続く見通しだが、道路や下水道が復旧すれば、いずれ街並みは元に戻っていくはずだ。
ただ一方で、事故の影響は水面下で残り続ける。補償が必要なのは間違いないものの、住民や事業者のわだかまりが生まれるのは避けられない。
全国各地でインフラの老朽化が進むなか、同様の事故は今後も起こり得る。次に同じ事態が起きたとき、事故後の復旧に留まらず、市井の暮らしにもどう向き合うのか。八潮市の事案は、その難しさを浮き彫りにしている。
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