下町ロケット、「リアル神谷弁護士」の知財人生

鮫島弁護士が説く「知財経営」の重要性

――でもその法律事務所は企業法務では著名な事務所ですが、知財に強いというイメージはありません。

だから良かったんです。90年代後半に米国で流行り始めたビジネスモデル特許という概念が2000年頃に日本にも入ってきて、ちょっとしたビジネスモデル特許ブームが起こった時期だったので、知財もカバーしておきたいということだった様です。

――知財系の弁護士がいないということは、自分で能動的に動かないとダメ、ということですよね。

逆に言えば自分の思い通りに出来るわけです。そこで、ベンチャーキャピタリストや政府関係者、ベンチャーの経営者とともに「パテントサイエンス研究会」という異業種交流会を立ち上げました。様々な分野の人が集まったので、人事だったり、経営だったり、様々な切り口から知財という学問を切ってみる。特許をどのように管理し、収益化すれば企業に最大の収益をもたらすのか。その研究の集大成が、2003年に発行した「特許戦略ハンドブック」(中央経済社)です。

――2003年頃というと、企業にとって特許は守りのツールであって、収益化のツールという発想はまだなかったのではありませんか。

その通りです。今でこそ知財は経営の一部と考えることは常識になっていますが、当時はなかなか理解されませんでした。

技術法務で中小企業の知財戦略への貢献目指す

――独立をされたのはこの本が出た1年後ですね。池井戸潤さんとはどういういきさつで知り合われたのでしょうか。

あるとき友人が「作家の友達と飲むので来ないか」と誘ってくれたんです。下町ロケットの連載が週刊ポストで始まる1年くらい前。「空飛ぶタイヤ」が直木賞候補になった頃です。すぐに意気投合しまして、二人で飲むような間柄になって、そんなある日、特許訴訟をモチーフに小説が書けないかなあ、と。で、後日事務所に来てもらって、一通りの話をしたんです。

――ナカシマ工業が乗っ取り目的で佃製作所を特許侵害で訴える場面があります。あれは実話ですか。

実際にあった話ではないです。池井戸さんが、「大企業が中小企業を訴える目的は何か」と聞かれたのですよ。それで、普通は大企業は中小企業相手に訴訟は起こさない。弱いものいじめだと言われて批判されますし、そもそも損害賠償金を取ろうと思ってもいくらもとれないからだ、とか言いつつ、あるとしたら、その会社を安く買収したいときかなあ、と。思いついたことを言ったんです。少し前に池井戸さんと飲んだとき、その話をしたところ、ご本人は全然憶えていませんでしたけどね(笑)。

――ドラマの中の神谷弁護士をどう思いますか。

恵さんが演じるという話は放送が始まる少し前に聞いたのですが、TBSから「凄く演技がうまい人」だと聞いていたので、楽しみにしてましたが、実際放送を見てすごくいいなと。原作のイメージとは若干違うのかもしれませんが、木訥で誠実、かつキレ者というキャラクターを実に巧みに演じておられますね。

――最後に今後の抱負をお願いします。

私どもの事務所がやっていることは知財法務ではなく技術法務だと考えています。技術をもっている企業を知財と法務でサポートし、競争力を上げていくという考え方です。今年6月に政府が公表した「知的財産推進計画2015」は、日本の知財戦略の要諦を定めたものですが、アベノミクスの掲げる「地方創生」にからみ、中小企業の知財戦略が最重要施策に挙げられています。そのために必要な「中小企業に対する技術法務サービス」を私どもは、10年以上やってきており、この分野では最先端を走っているという自負を持っています。今後、「技術法務で日本の競争力を担う」という社是のとおり、国の施策に貢献していきたいと思っています。

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