1社独占に終止符?「英仏高速鉄道」大バトルの行方 複数企業が参入表明「ユーロスター」は新車で対抗

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ほかの2社、ヴァージンとジェミニ・トレインズも着々と準備を進めている。

サー・リチャード・ブランソンが率いるヴァージングループはヴァージンアトランティック航空で有名だが、かつてはイギリスで都市間特急を運行する「ヴァージントレインズ」を運営していた。

イギリスの鉄道事業撤退後はしばらく鉄道から距離を置いていたが、ここにきて英仏間の高速列車参入へ名乗りを上げた。車両はフランス・アルストム製のペンドリーノタイプをベースに、車体傾斜装置を省略し最高時速を300kmへ引き上げた車両を使用する予定とされている。

ジェミニ・トレインズは、かつて英国鉄道貨物グループの会長を務め、土木技師として英仏海峡トンネル建設にも携わった、貴族院議員のトニー・バークレー卿が率いる新興企業だ。同氏はヨーロッパの独立系鉄道事業者(いわゆる元国鉄系鉄道会社以外の民間会社)協会「オールレール」の創設者でもある。

同社はロンドンからパリ、ブリュッセルのほか、ケルンへの運行を計画している。車両については現行型のユーロスター、ヴェラロe320のモデルチェンジ版とされる「ヴェラロNovo」を10編成用意すると公表している。

Velaro novo
ジェミニ・トレインズはシーメンス製の「ヴェラロNovo」を導入予定だ(撮影:橋爪智之)

ネックは車両基地の確保

まさに、この先数年の英仏間は苛烈な競争が予想されるが、ユーロスター以外の会社が参入するにあたって問題点がないわけではない。

まずは車両基地の問題だ。ユーロスターは現在、ロンドン東部に位置するテンプルミルズ車両基地をイギリス側のベースとしているが、参入を画策している各社もこの基地の使用許可を申請している。

イギリスの規制当局である鉄道道路庁(ORR)は、テンプルミルズ車両基地にユーロスター以外の会社の車両を収容するだけの十分な容量があると結論付けたが、既得権益を手放したくないユーロスター側はこれを否定している。

ところが10月30日には、そのORRが「財務的にも運営的にも堅調であり、投資家支援の明確な証拠と、必要かつ適切な鉄道車両を納入するという原則的な合意を提供した」ことを理由として、ヴァージンに対してのみテンプルミルズの使用許可を与えたとの声明を発表した。

つまり、少なくとも現状ではトレニタリアおよびジェミニの2社はテンプルミルズへのアクセスができないことになり、営業するためには別の車両基地を確保する必要が生じたことになる

ユーロスター セントパンクラス
ロンドン・セントパンクラス駅に停車するユーロスター(撮影:橋爪智之)
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