ハワイの鉄道「スカイライン」延伸で巻き返せるか 沿線で住宅開発、バスと連携し車からの転移狙う

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第3期はミドルストリート・トランジットセンター駅からチャイナタウン駅、オフィス街が連なるダウンタウン駅を経て官庁街のシビックセンター駅の6駅、約6kmの区間である。これが完成すると、一般企業や官庁への通勤手段としてのスカイラインが完成する。開業は今から6年後となる2031年の予定であり、その頃にはホオピリ駅周辺の住宅開発もかなり進んでいるだろう。「全線開業すれば1日8万5000人の乗車が見込める」(ブランジャルディ市長)。

スカイライン 第2期 終点 車止め
車止めが置かれ行き止まりになっている線路。第3期区間は2031年の開業を目指す(記者撮影)
【写真】ミドルストリート・トランジットセンター駅の先で途切れた高架

これだけの人がマイカーの代わりにスカイラインを使うようになれば、交通渋滞もかなり緩和されるだろう。メリットはそれだけではない。「自動車を完全に手放すことは無理でも、各世帯が複数台保有している自動車の数が減ることで、その購入・維持資金をほかの分野に充てることで生活の質を高めることができる」(同)。

予定通りに延伸開業できる?

とはいえ、2031年に予定どおり開業できるかどうかはわからない。2023年6月の第1期開業時には第2期区間の駅舎や線路の多くが完成していた。しかし、第3期区間の工事はまだ始まったばかり。ミドルストリート・トランジットセンター駅から先の線路はなく、終着駅となるシビックセンター駅は建設予定地こそ確保されているものの、工事が始まる様子はない。

スカイライン Phase3 シビックセンター駅 終点 予定地
第3期区間の終点となるシビックセンター駅の予定地(記者撮影)
【写真をもっと見る】ハワイの青い空をバックに走る車両や大規模な宅地開発が進む沿線の風景、路線バスとの接続点となるターミナルや新規開業した急行バスなど、ハワイ・ホノルルの鉄道「スカイライン」と公共交通の姿

建設資金の一部については連邦政府からの補助を見込むが、トランプ政権は公共交通事業への資金支援を行わない方針を取り、スカイラインの補助金も打ち切りになる可能性がある。物価高による将来の建設費高騰も心配だ。今後の建設に向け関係者の苦労は尽きない。

しかし、ハワイ州交通局のエドウィン・スニフェン局長は開業式典でこう発言して招待客を鼓舞した。「10年後には誰もがスカイラインから恩恵を受けているはず。そのときにみなさんがしてきた苦労に感謝する人はいないだろう。だが、沈黙は感謝の表れ。それで十分だ」。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げ。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に定年退職後の現在は鉄道業界を中心に社内外の媒体で執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京交通短期大学特別教養講座講師。休日は東京都観光ボランティアとしても活動。

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