"一条校信仰"が壊れつつある…教育の常識に変化、東京・あきる野に誕生する小学生対象のモンテッソーリスクールにみる新しい価値感

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しかし幼児教育としては広く実践されているものの、6歳~12歳の「児童期」、つまり「小学校課程」でモンテッソーリ教育を実践している学校となると、確認できる限りでは、全国でも4校ほどしかないのが現状だ。来春、あきる野モンテッソーリスクールが開校すれば、小学生のためのモンテッソーリ教育を実践する5番目の学校となる。

なぜモンテッソーリ教育を実践する小学校がないのかといえば、学習指導要領という高い壁があるからだ。日本で「学校」といえば、学校教育法第一条に定められた、「一条校」と呼ばれるところである。

学校教育法に定められた教育の目的や基準に基づいてつくられているのが学習指導要領で、一条校は学習指導要領をベースに教育することになっている。その学習指導要領に、モンテッソーリ教育は含まれていない。そのため、モンテッソーリ教育を中心とした学校(一条校)は成立しにくくなっている。

あきる野モンテッソーリスクールも、一条校ではない。社会福祉法人「和の会(やわらぎのかい)」が運営する、いわゆる「フリースクール」である。フリースクールで国や自治体の補助は受けられないので、その負担は保護者の肩にのしかかる。あきる野モンテッソーリスクールの授業料も、月額10万円ほどになる予定だ。

一条校に籍を置きながらフリースクールへ

日本社会では、「義務教育」という考え方が根を張ってきた。学校教育法の第17条には、「保護者は、子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満12歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う」とある。

ここだけ読めば、保護者はわが子を「小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部」、つまり一条校に通わせなければならない決まりになっているように思える。

しかし、同じ学校教育法の第16条には、「(保護者は)子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う」とある。必ずしも「一条校に通わせろ」と言っているわけではなく、保護者の義務は「普通教育」を受けさせることにあるといっているのだ。

そして2016年12月に成立・公布された「教育機会確保法」によって、一条校に籍を置きながら一条校ではないフリースクールやオルタナティブスクールで学ぶことを認める流れが強まってきている。一条校に籍を置きながらフリースクールやオルタナティブスクールで普通教育を受けていれば、保護者は義務教育違反を問われることはない。

これまで一条校だけを学校としてきた“一条校信仰”が壊れつつあるわけだ。あきる野モンテッソーリスクールも、そうした流れの中で生まれようとしている。

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