ベネッセが希望退職者募集、かつての雄「進研ゼミ」はどうなる?少子化と新規参入…「家庭学習」もデジタル化で勢力激変
「ベネッセのメイン事業である通信教育事業には、構造的な課題があり、それが解決されないままになっていると、私も思っていました」
ベネッセの通信教育は幼児向けの「こどもちゃれんじ」に始まり、小学生から高校生までをカバーする「進研ゼミ」がある。そのビジネスモデルは低額の「こどもちゃれんじ」で広く顧客を集め、利益率が高い進研ゼミにつなげていくというビジネスモデルだったという。
しかし、その利益率が高い進研ゼミの会員数の減少に、歯止めがかからないといわれる。会員数は2014年には263万人だったが、上場廃止直前の2023年には160万人にまで落ち込んでいる。上場廃止後は、会員数を公開していないが、減少に歯止めがかからない状態だと見られている。
会員数減少の大きなきっかけになったといわれているのが、2014年7月9日に発覚した約3504万件を超える会員情報流出事件だった。ベネッセは情報が流出した会員1人あたり500円分の金券を配布する補償も実施したが、事件で失われた信用を回復することはできず、2015年3月期の連結決算でベネッセホールディングスは最終損益が107億円と、上場以来初の赤字に転落した。
2016年3月期も82億円の赤字で、2017年3月期を含めて3期連続の減収減益になる見通しとなったことで、その責任を取って2016年6月に、事件発覚直前の2014年6月に社長に就任していた原田泳幸氏が辞任している。
会員数減少だけではない「紙にこだわりすぎた」
ただし、「赤字は会員数減少だけが原因ではありません。大きな問題は紙にこだわりすぎたことだと思います」と、Aさんは指摘する。
もともと進研ゼミは、送られてきた紙の教材で学習するスタイルから始まっている。このスタイルは現在でも維持されており、ネットで「進研ゼミ 中学講座」を覗いてみると、この紙教材中心の学習法である「オリジナルスタイル」と日々の学習はタブレット中心でテスト前だけ紙教材を使用する「ハイブリッドスタイル」を選べるようになっている。

一見、利便性が高いように思える。しかし現実は、タブレットやスマホを使ってオンライン専用で学ぶ他社のほうが人気を集めている。手軽だし、何より受講料が安いからだ。
「紙教材を作るには手間も労力も必要で、かなりのコストが必要になります。コスト高で会員も集まらないのでは、明らかに業績に悪影響となります」と、Aさん。この構造を変えなければベネッセの業績浮上は難しいというのだ。
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