一方で、「友達と先生には恵まれていて、支えてもらった」と、天津さんは当時を振り返る。
「中2のときの担任は国語の先生だったのですが、『英語のテストでどちらが高得点を取れるか勝負しよう』と持ちかけたら応じてくれました。結局私が負けて、罰ゲームで1カ月間、毎日5ページずつ英語の問題集を解くことになったのですが、そのおかげで英語の成績が学年トップクラスになったんです。『私でもできるんだ』と自信がつきました。そこから英語が好きになり、将来は英語を使った仕事をしたいと思うようになりました」
高校受験では、経済的な負担を抑えるために特待生制度を活用して私立高校の英語コースへ進学。特待生の天津さんには留学奨学金も給付され、入学後はオーストラリアのケアンズでの10日間の研修に参加し、「また留学したい」という気持ちが芽生えたそうだ。
しかし、高校での生活は「入学前に思っていたものとは違った」と天津さんは言う。
「インターナショナルスクールのような環境で学べると思っていましたが、大学受験のための勉強が中心でした。また、裕福な家庭の子が多く、母子家庭の私は居心地の悪さを感じていました。成績も悪く、私の背景を知らない先生から成績について何度も怒られ、学校に向かう道で泣いてしまったことも。友人関係もうまくいかず、通学時間も長くストレスを感じていて、ある日プツッと糸が切れたように学校に行けなくなってしまいました」
「自分には手の届かないもの」だった留学
天津さんは、高校1年生の11月に自主退学を決意。しかし、そこで立ち止まることはなかった。通信制高校に転校すると、外部のイベント運営など課外活動に積極的に参加。アクティブな同世代の仲間と出会い、起業にも関心を抱くようになったという。
留学は経済的な事情から難しいと思っていたが、通信制高校の先生が、文部科学省と日本学生支援機構による返済不要の奨学金制度「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム(以下、トビタテ)」を教えてくれた。高2の冬のことだった。
文科省が主導する高倍率のプログラムだと聞き、当初は「自分には手の届かないもの」だと感じたが、「ダメ元で応募」(天津さん)。留学プランを自分で設計する必要があったため、「どこに何をしに行くのか」を考えることから始めた。
「SNS運用に興味があり、調べていくうちに、スリランカで観光情報会社がSNS運用のインターンを募集していることを知りました。スリランカなら、留学希望者が多いメジャーな国とは違って採用されやすいかもしれないと思いましたし、物価が安いので費用が抑えられる点も魅力でした」
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