【オンもオフも自由に走る"G/Sスピリット"の再来】レトロと最新が共存した新型アドベンチャーバイク「R 12 G/S」に漂う"ちょうどよさ"


オプションで選べるクイックシフターやクルーズコントロール、さらにグリップヒーターといった先進装備により疲労も最小限。さすがに高速道路では風を感じたが、それすら冒険の演出に思えてくる。その日はミュンヘン近郊のワインディングや田舎道を1日300km近く走ったが、もっと走りたいと思った。
砂埃と風、自在に走る歓び


そして真価を発揮するのはダートだ。BMWが所有する専用オフロードコースに足を踏み入れれば、ヒルクライム、ガレ場、砂地──挑戦的な路面が次々と立ちはだかるが、それでもR 12 G/Sなら臆することなく入っていける。リア18インチホイールとブロックタイヤの走破性、200mm超のロングストロークを誇る前後サスペンション、軽量スリムな車体と低重心が作る絶妙なバランスが、安心感となってライダーの背中を押してくれるのだ。R 1300 GSと比べると走りは穏やかだが、それが扱いやすさにつながっている面もある。以前R 1300 GSで同じコースを走ったことがあるが、悪路での走破性を含めオフロードでもほぼ同レベルの走りが可能と感じた。




また、慣れてくれば「エンデューロ・プロモード」に切り替え、電子制御の介入を最小限に抑えたダイナミックな走りも楽しめる。アクセルとともにテールを軽く流し、砂埃を巻き上げて加速する感覚は、まさに自由そのものだ。林道を駆け抜け、森の小道を這うように進み、水飛沫を上げて川を渡り、草原を駆け巡る──その一瞬一瞬が、冒険の記憶として刻まれていく。唯一、空冷ボクサーの乾式単板クラッチは、スタック時の再発進で少し神経を使ったが、ワイドレンジな1速がほとんどのシーンをカバーしてくれるため、極低速でも半クラを多用する必要がないのが嬉しい。


総じて、R 12 G/Sはレトロな佇まいにシンプルな扱いやすさ、過不足のない電子装備、そしてたしかな走破力を備えた“ちょうどいい”アドベンチャーバイク。空油冷ボクサーの温もりを感じながら、オンロードもオフロードも心の赴くままに走りたい──そんなライダーに、胸を張っておすすめできる1台だ。
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