無声映画でフランス初のオスカー--映画『アーティスト』監督 ミシェル・アザナヴィシウス


私の仕事はいい映画を作ること

──フランス国内では、受賞について大きく報道されています。

そういう記事は読まないことにしている。映画を公開した当初は、批評などを読んでいたが、オスカー受賞後は、新聞・雑誌はもちろんインターネットも含めてまったく目を通していない。フランスのジャーナリストは、何か一言いいたいことがある人たちなので、何かいっているかもしれないが、私は目にしていない。

ただ、街の人がすごく喜んでいるのは実感している。「ハリウッドであなたの作品が受賞したことが僕らにとってもうれしかったし、そんなことが可能だとわかったのが快感」と、受賞を好意的に見てくれている。

──受賞したことで、混迷する欧州経済にメッセージを出せたと思いますか?

そうとは思わない。私の仕事はあくまでいい映画を作ること。一つ作品が大成功を収めたことで意見を求められる現象があるが、オスカーを五つ取ったからといってこの映画の作品の質が向上することはない。賞を取ったからといって私の資質は何ら変わることはないし、政治家の資質が加わったり、経済学者になれたりするわけではない。あらゆることに意見を求められても、それだけのキャパシティは自分にはない。

オスカーを受賞して役者やスタッフのキャリアにプラスになるということはあるが、自分がよかったと思うことはない。ただ唯一いえるのは、ほかの監督もミラクルを起こせるのでは、と思えるようになったことだろう。つまり「他人の意見に自分の意見を合わせてしまうのではなく、自分の思いや欲望を曲げないでやっていたら、うまくいくこともある」、そう思う人が一人でもいれば、この映画がオスカーを受賞した意義があるし、最大限の効果だと思う。

Michel Hazanavicius
1967年生。テレビ界でキャリアを積み、99年『マイ・フレンズ』で映画監督デビュー。2006年のスパイ映画のパロディー『OSS177私を愛したカフェオーレ』は、東京国際映画祭のサクラグランプリを受賞。

(聞き手:松崎泰弘、宇都宮 徹 撮影:引地信彦 =週刊東洋経済2012年4月21日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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