無声映画でフランス初のオスカー--映画『アーティスト』監督 ミシェル・アザナヴィシウス
私は、サイレント映画という手法を非常に評価している。その魅力は観客側と監督側、二つの側面からいえる。サイレント映画では、説明されることのないミステリアスな部分は観客自身が想像力を駆使して埋めなければならない。それで映画が観客により近しい存在になる。監督の側面からいうと、サイレント映画は映画の純粋型で、せりふがないがゆえに、映画が純粋な形で動くし、画像だけで語られる。文学にも演劇にも頼らない純粋な映画の本質が、生かされる手法だ。
──東京国際映画祭でグランプリを受賞した前作、『OSS177 私を愛したカフェオーレ』と、作風がかなり違っていますね。
OSSシリーズの目的はあくまでコメディ。だから面白さを追求している。面白さがより豊かになるように、いろんな形のものを入れ、いつもよりユーモアのレベルを高めるよう試みた。ただ、ストーリーはコメディのために作られており、それほど重視していなかった。一方、『アーティスト』は、くすくすと笑える部分はあるが、人物やストーリーを尊重しており、感動的な部分も盛り込んでいる。本当の意味で、ストーリーが構築されているといえる。
──初めてハリウッドで撮影したと聞いていますが、感想や苦労は?
ハリウッドの俳優やスタッフは、仕事ぶりがよく、撮影も大成功だった。ただ今回、作品の舞台が20年代のハリウッドだったから、ハリウッドで撮影する意味があった。