M&A交渉が本格化したのは2025年3月だが、10年前から法人向けサービス大手各社などからグループインの打診はあったそうだ。頑なに応じなかったが、大久保氏は2024年から毎月、東京とシリコンバレーを往復し、アメリカにおいてAI分野での起業を準備し始めることに。創業手帳代表との兼任は厳しいと考えたことも、M&Aの決断を後押しした。

大久保 幸世(おおくぼ・こうせい) 明治大学経営学部卒業後、外資系保険会社、ライブドア、メイクショップ(GMOグループ)を経て、2014年4月に創業手帳(旧ビズシード)を創業。「日本の起業の成功率を上げる」を企業ミッションと起業に役立つ情報誌「創業手帳」の事業などを展開。2025年8月に弥生に全株式を譲渡し、ファウンダーに就任。今後はアメリカにてAI分野で創業する予定 (写真:弥生)
以前からラブコールがあったといい、「会員100万人の強い会計製品を持っている弥生であれば、最も高い相乗効果が期待できると考えた」(大久保氏)という。
創業手帳単独だと、会員が100万人に届くのはまだ先のこと。資金面も限られるので大胆な投資は難しい。ところが、長い時間をかけて会員とデータを蓄積してきた弥生と組むことで企業価値は向上し、一足飛びでの成長が可能になる。譲渡後に大久保氏は創業手帳のファウンダーとして事業に関わり、代表取締役には弥生出身の土屋貴幸氏が就任した。
「スタートアップだと後継の経営者を確保するのは至難の業で、独自に選ぶと当たり外れや信用の問題が生じる恐れもある。その点、土屋社長は創業手帳の担当者で、両社のことを熟知しており信頼面で問題はない。また、弥生には優秀な社員が多く、人的な面でも助かっている」(大久保氏)
システム投資や販路拡大、資金調達、採用など、小規模な会社の多くが悩んでいる課題は大手企業とのM&Aで丸ごと解決できると、大久保氏も手ごたえを実感したという。
スタートアップのイグジット(出口戦略)といえば、IPO(新規公開株式)も選択肢に入るが、M&Aを選んだのはスピードを重視したからだ。
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