ただ、人はそれぞれ違うということを前提にしながら、相手の立場になって考え、最後はよい学校にしていくという共通の目的に向かって、生徒自身が自己決定していくことが大切です。人数が増えた分、1人ひとりと向き合うのには時間がかかっていますが、どこまで黙って見守っていくのか。われわれもエラー・アンド・ラーンで日々を送っています」(岡田氏)
「今日のオープンスクールは2回目ですが、1回目は準備不足で満足いく内容ではなかったので、その反省から、今回はいろいろ考えて準備をしてきたのだと思います」という岡田氏の言葉通り、かなり生徒たちの気合いを感じるイベントでした。FCIでは、学校にとっては大事な生徒募集の機会であるオープンスクールさえも、生徒のエラー・アンド・ラーンの機会にしているのです。
「これまでの教育はできるだけ失敗をさせない教育だったのでは」と疑問を投げかける岡田氏。長くサッカー指導を続ける中で、日本人選手の「主体性の欠如」に課題を感じてきた岡田氏は、この経験から、教育の現場でも主体性を育むことの重要性を認識し、学校教育を通じて社会に貢献できる人材の育成を目指そうと起こした学校がFCIです。
そこには、「法律に触れることはしない」「命に関わることをしない」「人の成長を邪魔しない」の3つ以外に生徒を縛る校則はありません。学び方の自由はあるけれど、人の学びを邪魔する自由はない。この大きな原則の中で、「エラー・アンド・ラーン」を合言葉に、FCIの教育は行われているのです。
日本一出会いの多い高校を目指して
午前中の座学の授業を終えると、午後は芸術・探究・野外活動の時間。基礎学力の習得とやりたいことの両立を目指すカリキュラムになっています。
また、日本一出会いの多い高校を目指して、トヨタ自動車会長の豊田章男さんをはじめ、社会の第一線で活躍しているゲスト講師に直接話を聞く機会もたくさんあります。何かを成し遂げた人から発せられる言葉に心を震わせる瞬間もあるでしょう。
しかし、出会いはゲスト講師だけではありません。「日本一出会いの多い学校にしようと思っていますが、今治の町に出て地元の人たちとの継続的な活動をすることにも重きを置いています」と校長の辻正太氏。それが、地域の企業とコラボして事業課題や地域の課題にアプローチする探究ゼミ活動です。
サッカーのFC今治を中心に町おこしに成功しているとはいえ、地方都市はどこもそうですが、今治市も人口減少やシャッター商店街などの課題を抱えています。生徒たちは町に出てそれらの課題に向き合い、自分には何ができるのかを考えていきます。
自分が見つけた課題に向き合い、ことを起こす生徒たち
探究活動をする中で、自主的に自分たちのプロジェクトを立ち上げる生徒もいます。そんな取り組みのいくつかが紹介されました。
「地域のみんな食堂」計画を立てたある生徒は、子ども食堂を立ち上げた人の本を読んで感動し、自分も世代間交流ができる場所を作って田舎を活性化したいと夢を語ります。
また、FCIから飛び出し、今治市内の他校の生徒を含めた6人で学生団体「たねからゼミ」を立ち上げた生徒は、子どもが夢を持つきっかけとなるイベントの企画と、商店街に拠点を設けて、高校生が作る多様な人が集まる「たねからベース」を今治商店街の空き家に作ろうとしていました。この活動を立ち上げるきっかけになったのが、日本財団「18歳意識調査」での日本人の意欲や課題解決への意識の低さだったと語ります。

















