エリート街道の兄と学歴なしの弟…2人の運命が「音楽」を通して動き出す!《セザール賞・主要7部門ノミネート》のフランス映画の凄さ
弟のジミー(ピエール・ロタン)は、母の知り合いだったクロディーヌに引き取られ養子としてフランス北部の田舎町で暮らしていた。かつて炭鉱で栄えた町も今は寂れており、学歴もないジミーは地元の学食で働いていた。
一方のティボは、インテリアも楽器も一流のものに囲まれたパリ住まい。3歳の頃からピアノを習い始め、今やアメリカ・クリーヴランド管弦楽団の音楽監督として世界を駆け回っている。
実は、兄弟の母親が亡くなった時、ティボの養母にジミーも一緒に引き取れないかという打診があったというが、ちょうど養母が妹のローズを妊娠中だったということで、引き取る余裕がなかったのだ。
運命の皮肉さを目の当たりにしたジミーも複雑な思いを隠せない。2人が暮らしてきた環境はまったくの正反対だったが、そんな2人の距離を少しだけ近づけてくれたのは「クリフォードの想い出」というジャズ曲だった。

それからほどなくして行われたティボの骨髄移植手術は、ジミーの協力の甲斐あって成功。元気になったティボは、命の恩人であるジミーに直接お礼を言おうと、ふたたびジミーのもとを訪れる。そこでティボは、ジミーが仲間との吹奏楽団を楽しみにしていること、そして彼が絶対音感の持ち主であることを知る。
音楽を通じてジミーと少しずつ心を通わせていくようになったティボは、ジミーの才能を応援したいと思うようになるが、やがてその決意は、二人の未来、楽団、そして町の人々の運命をも思いがけない方向へ動かしていく──。
酒を酌み交わす楽団員たちを見たことで着想
本作の企画の成り立ちは、クールコル監督が、トゥルコアン(フランス北部リール近郊の町)のバトンガール隊の世界を描く物語を企画したところにさかのぼる。
取材のために、地元の吹奏楽団とバトンガール隊のもとを訪れたクールコル監督は、そこの楽団員がリハーサル終わりに指揮者の家に集まって酒を酌み交わし、さまざまな世代の人々が楽しくしている様子を目の当たりにする。
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