【朝ドラ】「子どもの本はいやだなあ」やなせたかしが子ども向けの仕事を嫌がったワケ

子ども向けの仕事を当初は渋々引き受けた
NHKの番組で「漫画の先生」として出演するようになってから、子どもたちに人気が出て、子ども雑誌からの依頼も舞い込んでくるようになった、やなせたかし。
「アンパンマン」での大きな飛躍を知っている私たちからすれば「いよいよ成功への道を歩み始めた!」と興奮してしまうが、やなせは子ども向けの仕事に乗り気ではなかったようだ。
当時のやなせが憧れたのは、洗練された1コマ漫画で主に『ニューヨーカー』誌で活躍したソール・スタインバーグや、グラフィック・アートで名を馳せたアンドレ・フランソワなど知的なマンガだった。
ところが、子ども向けに頼まれる仕事といえば、「めいろあそび」や「まちがいさがし」に入れる挿絵や、「交通信号をまもりましょう」「食事の前には手を洗いましょう」「外出からかえったらうがいをしましょう」「早寝早起きをしましょう」と呼びかける児童書の絵である。
理想とのギャップの大きさに「子どもの本はいやだなあ」と思いながらも、依頼はとりあえず受けるのが、やなせの流儀だ。これでいいのかと思いながらも、やなせは子ども向けに絵を描くようになった。そのときの葛藤をこう振り返っている。
「すっかり堕落したような気分になったが、安くても沢山描ければそれなりに収入は多くて、カミさんはにこにこしている。いつしか身は俗塵にまみれて、坊ちゃん嬢ちゃんこんにちは、になっていった」
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