税務署はそこまでやるか!「税務調査」のリアル。課税対象外だと勝手に判断すると思わぬ事態に

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「子供と孫の預金額が大きかったため銀行に調査に入ると、定期預金の継続時に印鑑を押し間違えていたことがわかった。5つの印鑑が実印のように複雑で、ある子供の口座の証書に押印すべき印鑑のところに、別の子供の印鑑を押していた。これは社長が5人分の通帳を1人で管理して入金していて、贈与の実態がなかったことを示す典型的な証拠。子や孫の預貯金は故人の財産として課税した」

税務署の調査官は、遺族の口座の印影まで調べるが、それは故人の財産状況を把握し、ある程度メドをつけたうえでのことだ。

恐るべき下調べで、実地調査に入った事案の84%で申告漏れが指摘されている(撮影:尾形文繁)

恐るべき情報収集力

国税庁は日々、個人財産の情報収集を続けている。1つは所得税などの課税情報、もう1つは「法定調書」の収集だ。

法定調書とは、さまざまな法律で提出が義務づけられた取引記録であり、給料・退職金・利子・配当・不動産取引・生損保、そして国外財産調書など実に63種類に上る。

国税庁は、収集した個人財産情報を「KSK(国税総合管理システム)」に蓄積している。自治体から死亡届と固定資産関係書類が送られてくると、まずKSKのデータを確認し、故人のおおよその財産を把握。各地の税務署は、この個人情報を踏まえて相続税の申告書を精査し、申告漏れがあると見込めば税務調査に入る。

税務調査が入るのは、申告書の提出から1~2年後というのが標準だ。税務署は年が明けると確定申告の受理で忙殺され、3月にその山場を越えた後、相続税申告書の精査を始め、税務調査に入る対象を選定する。7月の人事異動を経て、調査官が一斉に調査に入る。

税務調査は現在、2種類ある。1つは、文書・電話または来署依頼による「簡易な接触」。もう1つが、申告者の自宅を訪問(臨宅)する「実地調査」だ。

23年度、簡易な接触は1万8781件、実地調査は8556件あった。申告から2年後に税務調査に入るとして、21年度の相続税申告件数は約13万4000件。簡易な接触と実地調査を含めれば、申告者に調査が入る割合は20%に上る。決してひとごとではない。

税務調査は忘れた頃に訪れるため、実際に経験した人からは「精神的にも金銭的にも大変な負担となる」との声が漏れる。

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