中国政府が自動車業界に「品質確保」を指示の裏側 秩序なき競争が招く誇大広告や手抜きに危機感

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前出の国家発展改革委員会の担当者は、自動車業界の秩序なき競争の具体例として、利益を犠牲にして市場シェア拡大に走るメーカーや、(自動運転技術や充電性能などに関して)虚偽の宣伝をするケースが後を絶たないことを挙げた。

「このようなやり方は、自動車業界全体の短期的利益を毀損するだけでなく、長期的に見ても技術革新(の継続)や製品の品質に影響を及ぼし、業界の競争力を低下させる」。この担当者はそう警鐘を鳴らした。

中国の自動車メーカーにとって、最新技術の導入と宣伝は生き残るための必須条件だ。写真はAIを導入した先進運転支援システムをアピールする小鵬汽車の経営トップ(同社ウェブサイトより)

中国の自動車業界ではなぜ、過度な価格競争や誇大広告が蔓延したのか。業界の専門家によれば、その背景には製品の同質化の問題がある。

「現在の自動車市場には多数のブランド、多数のモデルがひしめいているが、どれも似たり寄ったりで特徴が乏しい。新技術の機能や性能に関する客観的な評価も定まっておらず、多くの消費者は価格の安さばかり比較しているのが実態だ」

中国政府直属の技術系シンクタンク、中国自動車技術研究センターの専門家は、財新記者の取材にそうコメントした。

当局の不作為に恨み節も

完成車市場における過当競争の影響は、自動車産業のサプライチェーンを介して部品メーカーにも波及し、業界全体の収益悪化を招いている。国家統計局のデータによれば、2025年1月から4月までの期間の自動車製造業の利益率は4%強にとどまり、過去最低水準に落ち込んだ。

本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら

「自動車業界の秩序なき競争には複数の根深い要因がある。その1つは所管当局(による監督)の主体性と積極性の欠如だ。その結果、野蛮なやり方が業界全体に広がり、歯止めがきかなくなった」

財新記者の取材に応じたある業界関係者は、匿名を条件にそう本音を語り、次のように自論を述べた。

「企業の本分はお金を稼ぐことであり、それ自体を責めるべきではない。やはり当局がしっかり監督すべきだ」

(財新記者:余聡)
※原文の配信は6月20日

財新 Biz&Tech

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