1人で完結できる時代に「助けてもらう技術」が必須な理由。今さら誰も教えてくれないコミュニケーションの大前提に迫る

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たとえば著者がタクシー車両に決済機を導入した際には、乗務員や顧客からクレームが相次いだという。しかも著者はその当初、データや理論を盾に反論してしまい、相手の感情に寄り添えなかったと当時を振り返っている。

しかし、深々と頭を下げて「申し訳ありません」と伝えた瞬間、相手の態度が変わった。誠実に謝罪し、責任を引き受けることで、相手の気持ちは静まり、対話を始めることが可能になる。最初のこの一歩が、謝罪の成功を左右する鍵だ。(39ページより)

謝罪の後ろに続く言葉次第で関係が変わる

❷ミスの原因を共有し、解決策を提示する

「ごめんなさい」が大切だとはいえ、謝罪はそれだけで終わらせてはいけないものでもある。そのあとに「これからどうするか」を具体的に伝えることが重要なのだ。そうすることで、相手から「この人は改善に本気だ」と感じてもらえるからである。

上記の決済機の件でいえば、著者が選んだ伝え方は以下のとおりだ。

決済機の問題に対して、僕はこう伝えた。「通信速度の遅さが課題だと認識しています。技術チームと協力して2か月以内に処理速度を改善します。また、乗務員の混乱を減らすために使用マニュアルを見直します」。こうした具体的な解決策を提示することで、乗務員たちから建設的な意見を引き出すことができた。(39ページより)

立場を超えてミスの原因を共有し、そこから明確な解決策を提示するということ。そうすれば必然的に、謝罪は次の行動へとつながっていくわけだ。

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❸感謝を伝え、信頼関係を築く

最後に重要なのが、感謝の気持ちを伝えること。「最初に謝ったのだから、それで終わり」ではなく、相手が時間を割き、自分の話を聞いてくれたことに感謝を示すのである。それが謝罪を本物にし、前向きな関係を築くための礎になるということだ。

著者も決済機の問題の際、「乗務後のお疲れのところ、お時間をいただきまして、ありがとうございました」と頭を下げて会議室を出たそうだ。すると帰り際にひとりの乗務員から「ここまで説明に来てくれたリーダーは初めてだ。期待しているよ」といわれ、感極まったという。

これはまさに、感謝の姿勢から信頼関係が生まれた好例ではないだろうか。

謝罪はただの儀礼ではなく、信頼を築き、次の行動に繋げるための重要なステップだ。誠実に謝り、原因を共有して解決策を示し、最後に感謝を伝える。この3ステップを心がけるだけで、謝罪の場が新しい信頼を生む場に変わる。(41ページより)

後編では、「気にかけてもらえる人」になるための気づかいや、効果的な「頼み方」に迫る。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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