電子回路の集合体にすぎないAIが、人格を主張することはありえるだろうか。もしそうなったときに起こることと、人間が対処すべきこと
「内面世界があるだって? 本当なら証拠を見せてよ。君を分解すると、そのなかには電子回路しかないだろう? 内面世界を確認することなんてできないんだ」
するとZが冷たい声でこう言い放った。
「それなら、あなたの中に内面世界があるという証拠はあるの? あなたの頭を開けても、そのなかにはタンパク質の塊が入っているだけで、内面世界なんて確認できないはずだよ」
……ぐぬぬ。これには何と答えればいいだろう?
想像よりムズカシイ意識の問題
この話は意識の問題に直結する。自分は自分が意識的な存在で、内面世界を持っているということをつねに経験して確認している。だけど、他人がいくら自分にも内面世界があると主張しても確信はできない。
自分の意識は、自分にとっては確実だけれど、他人の意識に触れることはできないからだ。
このような意識の完璧な主観性は、自然科学による意識の研究を不可能にする原因になった。
自然科学の研究対象は、1つの現象を複数の視点から観察できるものに限られる。意識は〝主観性そのもの〞だ。
こんな理由から、自然科学では意識や内面世界に対する研究が行われにくい。
科学では、意識についての研究のかわりに、脳神経に対する生理学的な分析、心理的な行動に関する研究など、測定可能な領域から間接的に議論してきた。しかし、これは結果的に誤解を招いてしまった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら