「魔の6月」にも有効、荒れた学級も3日で雰囲気が変わる"教師の声かけ"の工夫 安定した学級経営に重要な「認める」声かけとは

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「教員が声かけを工夫することで、荒れかけている学級でも3日もあれば雰囲気は大きく変わります」。そう話すのは、公立小学校で約20年間にわたり教員を務め、現在はベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンターで主席研究員を務める庄子寛之氏だ。教員時代は荒れた学級を任されることも多かった庄子氏は、コーチングや心理学を学び、子どもたちの主体性を引き出す声かけを意識していたという。中だるみが起こりやすい「魔の6月」の学級経営にも役立つ、声かけの極意を聞いた。

教員と児童という「縦の関係」→人間同士の「横の関係」へ

庄子氏が新任だった約20年前は、「厳しく叱ることのできる教師」がよい教師だと言われており、庄子氏もそんな教師像に少なからぬ影響を受けていたという。

「当時は、動物の調教のように上下関係をしっかりと作るやり方が教育にも有効だと考えている教員が珍しくありませんでした。私自身、若かったこともあり、子どもたちになめられないように上下関係を明確にし、厳しい態度で接することができる教員にならなければいけないと思っていました」

庄子 寛之(しょうじ・ひろゆき)
ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター 主席研究員
公立小学校の教員を20年近く務めた後、現職。大学院にて臨床心理学科を修了し、人をやる気にさせる声かけや環境づくりを専門とする。次世代教育・働き方改革・道徳教育などに関する研修を全国各地で行い、研修回数は500回を超え、受講者も1万5000人以上となる。著書に『子ども教育のプロが教える 自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』(ダイヤモンド社)など
(写真:ベネッセ教育総合研究所提供)

しかし、経験を積み、落ち着きのない学級の担任を任される機会が増えると、「強く叱れば叱るほど、子どもたちの反発も強くなった」と庄子氏。自身の方針が間違っているのではと考え始め、教員以外の知見も取り入れようと、校外の研修に参加してコーチングやアンガーマネジメントを学び、その後は教員の仕事を続けながら大学院に通って心理学を学んだ。

「学びの過程で、大声で指導をする、怖そうな表情・態度で接するといったそれまでのやり方では限界があることに気づき、指導方法を見直すようになりました。最も大きな変化は、子どもたちとの関係性を、教員と児童という『縦の関係』から人間同士の『横の関係』で捉え直したことです」

まず実践したのは、「声を荒らげない」「必要以上に言葉を発さない」こと。例えば、朝の会が始まるタイミングで教室内が騒がしくても、根気よく笑顔で待ち続け、静かになってから「先生は何も言っていないのに、今日は1分半で静かになってすばらしいね」と声をかける。このように指示を減らし、子どもたちをよく観察してよいところを認める声かけを増やせるようになると、学級の空気は変わっていったという。

「教員は、子どもとの対話よりも『こうしなさい』という指示が多くなりがちですが、やるべきことは黒板に書く、デジタルツールで送信するといった“見ればわかる”工夫をしたり、毎回の授業の流れを決め、いつ何をするかを子どもたちが自律的に判断できる仕組みを作ったりしておくと、“指示の言葉”を減らしていくことができます」

庄子氏の言う「認める」とは、「よい事実をそのまま伝える」ことを意味する。「褒める」とは何が違うのだろうか。

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