台湾世論を背景に、頼清徳総統は3月に中国の脅威への具体的な対応として17項目の戦略を発表。軍事審判制度復活の検討や中国の身分証取得者への管理強化などが盛り込まれ、台湾が直面する安全保障上の厳しい現実への対抗策を打ち出した。
すでに2月から台湾政府は軍人・公務員・教員ら約37万人を対象に中国の身分証保有状況を調査。4月末までに中国の身分証申請者2名と居住証申請者75名を発見し、発見された全員が中国関連の身分がすでに抹消されたことを確認した。
このような中台の身分証の二重保有に関する調査は、もともとの台湾市民に留まらず、冒頭の中国人配偶者に対する中国の戸籍喪失証明を提出させる要求につながった。対象者は約1.2万人おり、台湾行政院大陸委員会によれば、中国の「戸籍」保有にあたる行為の範囲には、中国の住民身分証と定住証の所持が含まれるとの定義を示している。
中国人配偶者に対する措置は台湾政府に多数の問題
この通知の法的根拠は、2003年改正で2004年に施行された両岸人民関係条例第9-1条である。同条は「台湾地区の人民は大陸地区に戸籍を設けたり、大陸地区のパスポートを所持したりしてはならない」と定め、違反者は台湾地区の戸籍および関連する身分、権利を喪失すると規定している。
この2004年の施行時には、それ以前に中国の戸籍や中国の旅券を持つ台湾人民に対し、施行後6カ月以内の戸籍抹消または旅券放棄の証明を内政部に提出することを義務づけた。これは、1992年に同条例が制定された当初、明文規定のなかった中台間での「単一身分制度」を明文化したものだ。
そのため今回の中国人配偶者に対する中国の戸籍喪失証明の提出は法に基づいた執行であるというのが台湾政府の主張だ。しかし、今回の措置には複数の法的問題点が指摘できる。
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