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<詳報記事>日本製鉄の森高弘副会長が語った業績見通しとUSスチール交渉の行方「100%子会社化はトランプ大統領の狙いと一致する」

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前期から悪い環境が継続しているなら、そんなに変わらないと思われるかもしれない。だが、前期は下期から厳しくなった。その下期の状況が通期で続くため、全体ではより厳しくなる。

加えて、トランプ関税影響によってさらに最大1000億円落ちる可能性がある。それでも「6000億円以上」は確保できるという確信を持ち、今回の会社計画として発表している。

――決算説明資料には、「世界の鉄鋼需要は未曾有の危機的状況」で「改善の兆しが見えない」と記されました。

悪い要因は大きく2つある。1つ目は冒頭でも少し触れた中国の過剰生産の問題、2つ目はトランプさんが醸し出す不透明感だ。

年間30兆円が蒸発している

中国の方は構造的だ。中国の過剰生産の影響で、世界全体で鉄の1トン当たりのマージンが100ドル落ちている。世界の鋼材生産は年間18億トンあるので、年間およそ30兆円が鉄鋼業界から蒸発している計算になる。影響は甚大だ。

過剰輸出が続くのかどうかという目で中国経済を分析すると、人口減少が始まり、対中投資が減る中、中国は鉄を作り続けると思う。中国からの輸出増加はまだ始まりにすぎず、これからもっと増えていく可能性がある。

中国政府は、かつては各国からの見え方を気にして、ある程度秩序のある生産を考えていた。だが今は経済悪化で、それどころではなくなっている。鉄鋼業を止めると雇用に響くため、政府はむしろそちらの方の影響の大きさを考えている。この問題は構造的に続き、中期的にも好転するようには見えない。

森 高弘(もり・たかひろ)/1957年生まれ。東京大学法学部卒、ペンシルベニア大学経営大学院卒業。1983年新日本製鐵(現日本製鉄)入社。2014年執行役員、2016年ウジミナス社副社長、2020年日本製鉄常務執行役員、2021年4月副社長。2024年4月から副会長を兼務。インドやUSスチールなど大規模海外プロジェクトを担当(記者撮影)

――もう1つの要因であるトランプ大統領関連はどうですか。

トランプさんについては、彼の一存で政策判断が決まっていて、いつ、どこで、どういう方向に行くかがわからない。

関税というものについて、彼はとても良い政策だと思っていて、税率の高低は別として必ずやり続けると思う。そうしたときに、アメリカという巨大市場、われわれが得意とする高級鋼の世界最大のマーケットの成長を取り込むためには、インサイダーになる以外にない。USスチール買収の重要性が増している。

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