結局…「スマホで削除したメッセージ」は復元できるのか?成功の鍵はデジタルフォレンジック調査の「時期」、平時から準備しておくべき3つも紹介

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デジタルフォレンジック機能は、意外と皆さんの身近なところにあるのです。あるいは、契約済みのサービスにすでに、「監査機能」「訴訟対応」などの呼び名でフォレンジック機能のオプションが用意されているかもしれませんので、システム担当者に一度尋ねてみても良いかもしれません。

フォレンジック活用のために平時準備しておくべき3つ

最後になりますが、平時から有事の準備を行っておくことは、デジタルフォレンジック技術を活用する場面においても重要です。具体的には、下記の3つの準備が大切になります。

(1)調査会社との契約手続きを事前に済ませる

不正や被害が発覚してフォレンジック調査を依頼する場合、通常は調査会社とのNDA(秘密保持契約)締結から始まります。ここで、契約内容の法務確認に時間を要して調査への着手が遅れると、復元できたはずのデータも復元できなくなってしまう恐れがあります。

フォレンジック調査はセンシティブな情報を扱うため、依頼者側も必要以上に慎重になることが珍しくありません。実際、「フォレンジック調査を受託した事実自体を、誰にも知られないようにしてほしい」「秘密保持の期間を、永久とか100年とかにしてほしい」という要望を受けたこともありました。こうした場合、依頼者の理解を得るまでに時間がかかるため、いくら業者側の準備が整っていても、調査まで長くて数週間〜1か月以上もかかりかねません。平時に契約手続きを済ませておけば、いざというとき、すぐ調査に着手できるでしょう。

(2)信頼できるフォレンジック調査業者を選定する

やはり、売り上げが最優先の業者や技術的に未熟すぎる業者は、何かとトラブルを起こしがちです。平時のうちに、信頼できる業者をじっくり探しておくことをおすすめします。注意点としては2つ。1つは、ネットの業者比較サイトや記事は参考にしないこと。もう1つは、フォレンジック業界や捜査機関に知人がいれば、なるべく複数人に相談し、業界内で悪名が立つような業者に引っかからないようにすることです。

デジタルフォレンジック技術者としての資格認定書
デジタルフォレンジック技術者としての資格認定書。「DF実務者資格(CDFP-P)」は、「DF基礎資格(CDFP-B)」より上級の資格だ(筆者撮影)

(3)事前に「ログ」の取得可否を確認する

メールサーバへのアクセスログを取得しようとしたとき、サーバ契約によっては、ログが入手できないことがあります。平時のうちに、利用中のサービスでログの入手が可能かどうか確認しておくとともに、場合によってはサービスの切り替えやオプション契約の検討が必要になります。

また、医療機関に「内科」「外科」などの標榜科目があるように、デジタルフォレンジック調査においても、「訴訟対応」「サイバー攻撃」など複数のジャンルがあります。ぜひ、正しい判断材料に基づいて、信頼できる専門家を探しておかれることをおすすめします。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティーの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。
下垣内 太 アイフォレンセ日本データ復旧研究所 代表取締役

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しもがいと だい / Dai Shimogaito

1998年にアイフォレンセ日本データ復旧研究所を創業。不正のデジタル証拠解析および消失データの復元が専門。デジタル・フォレンジック・プロフェッショナル認定の実務者資格(CDFP-P)を有し、データ消失事案や、内部不正・機密漏洩・労務問題などの民事事件に加え、殺人・詐欺・脱税など刑事事件でのDF調査も行う。また日本データ復旧協会の常任理事であり、データ消去規格「IEEE 2883-2022」を制定する日本人唯一の「SISWG」委員でもある。HDD制御の特許技術を保有し、2018年にはデジタル・フォレンジック研究会から技術開発賞を受賞。「CODE BLUE」や「HTCIA」などの国際カンファレンスでの研究発表のほか、法執行機関でのデジタル証拠に関する講義実績も豊富。

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