結局…「スマホで削除したメッセージ」は復元できるのか?成功の鍵はデジタルフォレンジック調査の「時期」、平時から準備しておくべき3つも紹介
しかし、それは誤りです。気になる方は、ぜひ公開された報告書を読んでほしいのですが、実は復元に関する技術的な記述は明確にされていないのです。あくまで「復元できたメッセージもあった」と、ふわっと書かれているはずです。おそらくこれは、あえて詳細な説明をしないという配慮があったのだと思われます。フォレンジック担当者が復元可否のボーダーラインを示してしまうと、他の犯罪を助長しかねませんし、警察などによる捜査の妨げになる恐れもあるからです。
ところが、この状況に便乗するかのように、まるでデジタルフォレンジックで何でも復元できるかのように解説する記事が出てきました。かねてネット上では、信頼できるデータ復旧業者やデジタルフォレンジック業者を紹介するランキング記事に見せかけたステルスマーケティングなどが横行しています。皆さんはどうか、そうした情報に惑わされないように注意していただきたいです。
なぜなら、科学的に正しくない理解をすることは、真実を誤認することに繋がりかねないからです。とりわけ訴訟においては取り返しのつかない判断を導いてしまうかもしれないからです。
フォレンジック調査の正しい理解は、「削除メッセージは必ずしも復元できるとは限らない」です。そして、削除データを復元することだけがフォレンジック調査でもありません。
削除メッセージは「復元」しなくても入手できる
例えば、何らかのデータを消したとします。そのデータを復元できる確率は、今すぐフォレンジック調査をするのか、数週間後にするのか、あるいは1年後にするのかによって変わるのです。復元できる確率は、時間の経過とともに右肩下がりで低くなります。これはスマホに限らずパソコンでも同じです。復元できるチャンスが永遠に持続するということではないのです。なお、この話はスマホなどの機器が1台であることが前提です。
次にスマホが2台ある状況を想定してみます。2人がメッセージアプリでやりとりをすると、その会話はお互いのスマホに記録されます。1つのメッセージが、送信者と受信者の2台に存在することになるわけです。ここで、どちらか1台のスマホでメッセージを削除してしまい、そのスマホにフォレンジック調査をしてもメッセージを復元できなかったとします。
「復元」だけに焦点を当てれば、このメッセージの入手は絶望的です。しかし、1台のスマホから削除されても、会話相手のスマホには同じメッセージが残っているかもしれません。会話相手のスマホにフォレンジック調査をすれば、特殊な復元解析をせずとも、メッセージを入手できるかもしれません。
このように、メールやチャットなどのコミュニケーションツールは、同じメッセージが複数の機器に保存されるという特性がありますので、1つの機器で削除されても、他の機器から入手を見込むことができます。
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