結局…「スマホで削除したメッセージ」は復元できるのか?成功の鍵はデジタルフォレンジック調査の「時期」、平時から準備しておくべき3つも紹介
つまり、削除メッセージは「復元」しなくても入手できる方法があるということです。これに加えて、フォレンジック調査では、対象の機器から「データを入手するコピー操作」を「保全」と呼ぶことを踏まえて報告書を読み直すと、実は、復元されたメッセージに関する詳細はふわっと回避されていることが分かると思います。なお、私自身は当該調査には従事しておりませんので、あくまでも推測です。
フォレンジック調査に必要な「戦略的計画」とは
また、フォレンジック調査においては、技術的なことも大切ですが、個人利用のデバイスの調査においては、プライバシーの考慮も忘れてはなりません。社員(役員を含む)の不正・犯罪が疑われるときでも、会社がフォレンジック調査を行うためには、本人の承諾や協力がなければ調査できないケースも多々あります。

会社の機密情報が社員の自宅パソコンに不正に転送されたことが発覚した場合、会社の調査担当者が当該社員の自宅を訪問し、何時間もかけて説明してようやく自宅パソコンの調査に対する同意が得られるようなこともあります。
回収されたデバイスは、事前の計画通り、直ちに第三者である当方に預けられ、フォレンジック調査を経たのち、不正・犯罪に関する判明事項のみが会社側に報告されます。こうすることで、会社側が当該社員のプライバシーに触れる機会の一切を無くすことができ、事案の調査を進められるようになります。
前述の社員の事例では、フォレンジック調査をどのような方針・計画で進めるかを予め協議してから実行に移したこともあり、結果として本人の同意のもと、プライバシーを保護した状況で調査を遂行することができました。
しかしながらフォレンジック調査は、ときに戦略的に計画を立てなければ、目的の情報に手が届かないこともあります。実際、行方不明者を探す調査において、予め方針や計画が協議されていなかったことでスマホ所有者の同意を得られず、フォレンジック調査を行えなかった事例があります。
後で伺うと、失踪者の家族側の代理人は、失踪者の親友に連絡をとってスマホをフォレンジック調査させてもらい、そこから失踪先のヒントを得ようとしていたそうです。しかし当方はこの事情を知らされておらず、ある日突然、代理人の方から「こちらの同行者(親友の方)が調査に協力してくれるので、フォレンジック調査の事前説明をお願いします」と相談に来られたのでした。
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