部下の自立性を尊重し「邪魔をしない」ことで結果を出す。老子が説くリーダーとは英雄やヒーローではなく「陰に隠れた存在」
だが、ご存じのとおり、深みのある老子の教えを完全に理解することはなかなか困難でもある。そこがハードルになるわけだが、次の5つの要諦を覚えておけば、その教えをビジネスとして活用することは可能であるようだ。
2 目指す方向の逆を行く!
3 成功する人は徹底的に手を抜く!
4 やさしいことだけ手を付ける!
5 組織のグリップを手放す!(「はじめに」より)
つまり、これが著者のいう「老子版マネジメント理論」になるわけだ。なお、これらの主張は決して夢物語の類でも机上の空論でもなく、現実的に多くの優れた企業やリーダーが実践していることでもあるという。
たしかにそのとおりであり、どれも無理なく実践できそうでもある。また、こうして捉えてみると、老子とその考え方を身近なものとして柔軟に受け止めることができるのではないだろうか。
ここでは、「優れたリーダーは何もしない!」に焦点を当ててみることにしよう。
老子が説く聖人は「陰に隠れた」存在
先の見えない時代に、優れたリーダーがすべきこととは?
この問いに対して多くの方は、「組織を刷新する」「新規事業に挑む」「積極的に現場にかかわる」ことができる「率先垂範のリーダー」をイメージされるかもしれない。だが著者は、「率先垂範のリーダーは最終的には失敗する」と指摘している。
では、リーダーはなにをすべきなのだろうか。
そのヒントになるのが「老子」の教えなのだそうだ。老子の説く聖人(ビジネスの世界に置き換えれば“優れたリーダー”とは率先垂範のリーダーではなく、自らは後方に控え、前面に出ることはないというのである。
そして理想のリーダーについて、老子は次のように述べている。
太古の世では、下々の民は君主の存在を知っているだけであった。……君主が悠然として口出ししなければ、功績を上げ、事を完遂し、民は「自分たちは自然にこうなっている」と言うのである。(24ページより)
老子のいうリーダーとは、英雄やヒーローではなく「陰に隠れた存在」なのである。明確な指示を出すこともなく、下の者(部下)はその存在を知っているだけにすぎないということ。だが、それでも無理なく成果を上げることができるわけだ。
ビジネス書ではよく「部下が自主的に動き出す」というようなフレーズを目にすることがあるが、まさにそれにあたるのだろう。
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