「研究指定校やめた」芦屋市、完全自主参加制の研究体制で広がった"子どもに委ねる学び" 教委が事務も代行「ONE STEPpers」仕組みが凄い

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8本の授業づくりのプロジェクトに参加したという田中秀平氏(教員歴14年)は、「いろいろなアドバイスを得ながら授業づくりができたことは大きく、予定が合わず最後まで参加できなかったものに関してもどんどん情報が入ってくるし、本当に参加してよかったです。また本校では先進校視察に行く先生も多く、同じ教育のイメージを持って語り合える仲間が増えたことが心強くうれしかったです」と語る。

同じくプロジェクト研究に参加した松尾駿氏(教員歴10年)は、「新たな学びやフィードバックを得られたことだけでなく、そもそも学校ははぜ必要なのかといった本質的な対話の機会に恵まれた点もよかった」と言う。研究主任として、今後は学校全体で共通了解の下、子どもたちに学びを委ねていけるような座組みづくりを考えていきたいそうだ。

岩国小学校の算数科の実践

打出浜小学校で5年生の担任をしていた渡邉菜摘氏(教員歴9年)は、子どもたちに小さな自己選択を委ねるところから始め、1時間内、2単元内とステップアップして算数の自由進度学習に挑戦したが、「方向性を持って取り組めたのはONE STEPpers のおかげ」だと話す。「一斉授業のときに算数が苦手な子どもを置き去りにしていたことに気付くことができましたし、結果として、子どもたちの学力は大きく向上しました」(渡邉氏)。

打出浜小学校の算数科の実践

渡邉氏に誘われて参加した同学年担任の藤原健太郎氏(教員歴7年)も、「子どもに学びを委ねる実践を通じて、こんな授業や学習をしてもいいのだと発見が多くありました。子どもたちはしだいに主体的に学習を進めるようになり、テストの点が50点以上アップした子もいます」と手応えを感じている。

ONE STEPpersは現場を一時的に離れている教員も歓迎している。昨春から大学院に通いながら参加する藤田雄也氏(教員歴17年)は、次のように語る。

「自分を含め教員は正解を求めがちですが、研究会でさまざまな問いと向き合う中で考え続けることの大切さを学ぶことができました。また、これまでは市教委の方とお会いすると立場上、距離を勝手にとりがちでしたが、ONE STEPpersの活動を通して『一緒に教育を考える仲間』という認識に変わってきたような気がします」(藤田氏)

また教員らは、「強制ではないところがいい」「新しいものをみんなでつくっていくところが面白い」と口々に話した。教員のモチベーションを高める環境づくりの大きなヒントがここにありそうだ。

2025年度のONE STEPpersについて尾上氏は、「1週間の先進校実践研修も予定しています。先生たちのペースを大切にしながらしっかりと伴走していきたい」と話す。

「先生方は、意欲も能力も非常に高い。その意欲と能力が最大化されるときに子どもたちにとって魅力的な教育活動が実現できると考えていますので、いかに先生方にとってよい環境をつくれるかがカギとなります。今後は奈良県生駒市や大阪府大東市、兵庫県明石市などほかの自治体との連携も深めるなどして、さらに先生たちをサポートしたいと思っています」(甘利氏)

大きく変わり始めた同市の教育に、引き続き注目したい。

(文:國貞文隆、注記のない写真:芦屋市教育委員会提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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