ゴルフ会員権に「手が届かない」時代は去った 子ども向け商品も登場

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ゴルフ会員権は当時、投資対象になった。自分がプレーしないコースでも、たとえば1000万円で買って、1500万円になったら売る。同組合の佐藤仁志理事・事務局長によると「バブル期は1日で100万円上がるところもあった」という。1985年から5年間で平均が3000万円以上上がった異常な事態だった。コースによっては5億円とか、3億円とかいう値が平気でついていたし、支払える人が日本にたくさんいたということなのだろう。

会員制を基本とする日本のゴルフ場では、会員権を持っていないと(ゴルフ場の会員にならないと)優先的にプレーできない。もちろん、ビジターという会員以外の人もプレーできるが、ビジター料金は会員権価格上昇の影響もあって、かなり高かった。

「金が掛かる」と言われていたゴルフの敷居が、さらに高くなったのもこの頃だった。休日にゴルフをやると、5万円、6万円とかかる。自費では無理、会社の経費ならできる。会社も景気の良いバブル期はゴルフ代を経費にしてくれた。そんな図式だった。バブル崩壊とともに経費でできなくなった人たちがまずゴルフ場からいなくなった。ゴルフ場利用者が最盛期(バブル期)の1200万人から700万~800万人程度に減ったのもうなずける。

右肩下がりのゴルフ業界の中でも急激な下がり方

今はどうか。再び、関東ゴルフ会員権取引業協同組合のデータを見ると、最高値から7年後の1997年には1000万円を割り込み、2012年11月に190.1万円の最安値を記録する。翌年、いったんは270万円ほどに上昇するが、現在は200万円前後。ゴルフ業界の右肩下がりの中でも、下がり方が急激だ。

景気動向がもちろん最大の理由だが、そのほかにも預託金(保証金)返還問題や、高額な名義書換料(名義変更料)の問題などもあったという。預託金は家賃で言うと敷金のようなもので、ゴルフ場に預けて施設やコース管理などに使い、会員でなくなった時は返してもらえる。

名義書換料は礼金のようなもので、新たに会員になると会員権の名義を書き換える際の費用になる。預託金が返還できなくなって倒産するゴルフ場も出てきて会員権全体の信頼を損ねたことも、下落の要因になった。

いいことかどうかはそれぞれだろうが、ゴルフ会員権が投資対象ではなくなってきたのは、個人的にはいいことだと感じている。ゴルフ場にもよるが、約40年前よりも会員権相場は安くなっている。一方、厚生労働省の年次統計によると、1976年のサラリーマン平均年収は220万円、2012年は473万円とこちらは2倍以上になっている。

同組合の佐藤理事・事務局長は「今でも高額な名義書換料などを低くするなど、新しい方が会員になりやすくしていかないと、ゴルフ場も、会員権市場も活性化しない。預託金や名義書換料を下げたゴルフ場で若い人たちが新たに会員になって活性化しているというところも出てきています」という。

「もう買えない」と会員権をあきらめていた時代から「もう買える」時代になってきたようだ。ジュニアにとっても、大人にとっても、会員権の敷居はだいぶ低くなってきた。これからゴルフをできるであろう年数なども計算した上で、投資としてではなく、プレーするために通えるゴルフ場の会員になるのも、これからのゴルファーの選択肢になるのかもしれない。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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