セブン&アイ、伊藤忠離脱でMBO頓挫、続く正念場 カナダ企業による買収の可能性は高まったか
同社内ではセブン&アイとの協業に向け、プロジェクトチームが組織されていた。各カンパニーから数十人規模の人員が集められ、多角的に協業の検討が進められていた。
しかしその内容は「(伊藤忠傘下の)ファミリーマートとの共同購買などにすぎなかった」(別の関係者)ようで、市場を納得させるシナジーを創出することは難しいとの結論に至った。
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破談が明らかになる直前の2月10日には、伊藤忠が鉢村剛副社長兼CFO名義で、セブン&アイ買収提案への参画は「具体的条件は未定で取締役会に付議する状態でもない」、「株主の理解と納得が大前提」とするコメントを発表していた。
議決権比率や取締役の構成をめぐり、両者間で隔たりがあったという見方もある。前出の伊藤忠関係者は「鉢村さんのコメントは交渉中だった創業家陣営への最後通牒だったのでは」と振り返る。
単独路線なら株価のさらなる下落は必至
今後の焦点は、引き続き社外取締役からなるセブン&アイの特別委員会の判断だ。創業家の提案が白紙になった今、特別委員会はクシュタールの提案と単独路線のどちらが株主価値向上に資するかを検討することになる。「5月の株主総会までが1つのメド」(丸山好道CFO)だ。
セブン&アイ経営陣や特別委員会のメンバーは、アメリカでシェアトップのセブン‐イレブンと同2位のクシュタールの合併は、現地の独占禁止法上の懸念を払拭できないと強調しており、単独路線を志向しているようだ。
MBO断念が公表された2月27日、セブン&アイの株価は前日終値比で一時12%安の2094.5円まで下落したが、昨年にクシュタールの買収提案が明らかになる前の株価(1700円台)と比べると依然として高い。また、クシュタールの提案は為替変動の影響を受けるものの、1株2700円前後と足元の株価をなお大きく上回る。
提案をはねのければ株価の急落が予想され、既存株主の反発は避けられない。すでに投資ファンドなどのアクティビスト(物言う株主)がセブン&アイ役員陣に接触しているという情報もある。単独路線を選ぶのであれば、市場を納得させる成長戦略を示すことや、割安な株価を放置していた現体制の刷新が不可欠だ。
他方、年明け以降は別の動きもみられる。城内実経済安全保障大臣や武藤容治経済産業大臣など、要人から「社会インフラであるコンビニを外資企業が買収する影響を注視する」旨の発言が相次いでいるのだ。「セブン&アイ経営陣や、資金調達に窮した創業家が陳情へ動いたのではないか」。セブン&アイ内外の関係者からはそうした指摘も聞かれる。
産業界を騒がせてきた、セブン&アイ買収をめぐる問題。創業家の断念で争奪戦から新局面に移るが、先行きの不透明さは変わっていない。
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