ブランドをもたないのは鴻海をはじめ、エレクトロニクス産業をリードする多くの台湾企業が成長してきた際の基本姿勢でもある。自らブランド製品を展開すると、生産を委託してくれる顧客企業の製品と競合する。また競争だけでなく、顧客から製品情報を自社ブランドで使われているのではないかとあらぬ誤解もされて信頼とビジネスを失いかねない。
電子機器を専門に扱ってきた鴻海がEV参入を表明したのは2019年で、本格的な展開を2021年から始めている。EV事業参入時の狙いも独自ブランド構築ではなく、他社からの生産受託による成長だった。
想定より出遅れているEV事業
EVはエンジン車に比べれば構造が単純とされ、近年はソフトウェアやアプリケーションを搭載して自動車に付加価値をつける動きが自動車業界では顕著になりつつある。長年の付き合いがあるアメリカの大手IT企業がこれらの流れに合わせて自動車事業に参入すれば自社はEVの受託製造で成長できると鴻海は見込んでいた。
ただ、鴻海のEV事業は思うように成長していない。本命顧客のひとつと見られていたアップルは自動車事業へ未参入のままだ。世界全体でもEVが想定ほど広がっていないことで、新興EVメーカーの破綻が相次いでいる。
成長する新興メーカーは自社生産できているところも多いほか、生産を委託する場合も中国を中心に製造能力が余っていることから既存の自動車メーカーが請け負っている。自動車生産の実績が少ない新規参入組の鴻海への生産委託は増えていないのが実情だ。
鴻海は2025年に世界EV生産で5%、いずれは40%のシェアを目指すとしているが、今のままでは目標を達成できない。仮に日産と協業して、日産車の製造を受託できれば出遅れ挽回への契機にはなる。
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