真のリュクスに浸る、「文化財」と過ごすリノベ宿 「時を超える美」にもてなされる極上のひととき
所有者の日下部家は、屋号「谷屋」を掲げ、江戸幕府の御用商人として栄えた商家だった。その11代目当主が柳宗悦の提唱した「民藝運動」に共感し、1966年に日下部家が住んでいた家を「日下部民藝館」として地域に開いた。切妻造りの段違い2階建て、一部吹き抜けの総ヒノキ造り、梁と束柱の力強い木組が印象的な、町家造りの特色を持つ住宅だ。

13代目当主はこうした民藝の継承の思いを受け継ぎ、敷地内の民家を改修し、2022年に1日1組限定の宿「谷屋」として開業した。

宿の設え1つひとつが、この地の誇り高い伝統と文化を味わう芸術作品だ。設計は、金閣寺などの修復に携わった建築家の森田一弥氏。町家建築を生かした空間には、飛騨の匠の技術が集結する。高山の土を使用した土壁は左官職人の挟土秀平率いる「秀平組」が手がけ、飛騨の手すき和紙「山中和紙」を使った障子や地元家具作家のオリジナル家具などで設えた。

女将が点てる一服のお茶のもてなしに始まり、宿泊客の希望に合わせて飛騨高山の自然や歴史、食、農、工芸などの体験も提供される。この地で生きる人々の営みを感じることができるだろう。
香り豊かな「総ヒノキ風呂」も格別だ。浴槽から洗面、お手洗いに至るまで飛騨高山産のヒノキを贅沢に使用し、中庭に面した窓を開けると半露天風呂としても楽しむことができる。
夕食は、古い街並みを歩き地元の店へ足を運んだり、仕出しを取ったりできるほか、日下部家ゆかりの料亭の料理人を招き、すき焼きなどを目の前で調理してもらうこともできる。
また、夜は日下部民藝館を貸し切りのプライベートラウンジとして利用できる。夕食と朝食をここでいただくことも可能で、重要文化財の囲炉裏端で高山の味に舌鼓を打つという至福の時を過ごせる。

宿泊を通じて、飛騨の匠の意匠と脈々と受け継がれる文化を後世へとつないでいく価値を感じることだろう。
文化財と現代アートの融合「岳麓翠苑」
富士河口湖にも、商家由来の極上の宿がある。絹織物等呉服中心に栄えた旧家・井出家から、205年前に分家し建てられた井出新宅をリノベーションした「岳麓翠苑」だ。
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