悪いのは私じゃない症候群 香山リカ著
第2章「医者が悪い!」では壊れかけている病院が取り上げられる。2008年の日経新聞の調査によれば、回答した病院の71.1%が過去1年に「(患者からの)暴言やセクシャル・ハラスメントを含む院内暴力が起きている」と答えている。
著者は精神科医であり、自身の経験も書いている。ここ数年、患者さんに同伴して来る家族が増えているというのだ。小学生や高齢の患者さんに付き添ってくるのではない。ほとんどは、30代、40代の患者にその母親あるいは両親が同伴するというものだ。そして診察室に入り、著者の問診に答えるのは患者ではなく、その親。
この記述を読んで思いだしたのは、学生の親である。近年の大学の入学式、卒業式には本人以外に親が出席するようになっており、大学は「学生数+学生数×2(両親)」の施設を用意しなくてはならない。子どもの就活でも親が人事部に問い合わせすることがある。もし許されれば、入社式に立ち合いたい親も多いだろう。
第3章「職場が悪い!」ではうつ病の増大が取り上げられている。メンタルヘルスは組織戦略にとって重要性を増している。著者は次のように書いている。
「働く側と雇う側、それぞれが「うつ病になったのはそっちが悪い」と責任を押しつけあったり、「私のせいじゃない」とそれをしりぞけようとしたりしている」、「そこで少しでも「私のせいかも」と自らの非を認めれば、すぐに解雇あるいは訴訟などが待っている」。
昔はこうではなかった。著者の記憶では、2000年代の前半はこうではなかったそうである。