なぜJALはパイロットの飲酒問題を繰り返すのか 意識改革ならず、再発防止策はまた機能せず

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それだけではない。今回の事案では、自主検査に立ち会った空港職員は状況を誤って東京のオペレーションセンターに報告。センターは副機長の自主検査でのアルコール検知を誤検知と判断してしまった。

2018年にはロンドン発羽田行きの便に乗務予定だったJALの副操縦士から基準を超える血中アルコール濃度が検出され現地警察に拘束される事案が発生。赤坂社長(現会長)が謝罪会見を行った(編集部撮影)

JALによれば、本来はアルコール検査の専門知識を持つ運航本部に副機長の挙動を連絡すべきだったが、「空港職員も乗務員もオペレーションセンターの判断にゆだねてしまっていた」と南本部長は悔やむ。

「このような悪質な運航乗務員を組織で管理できていなかった」と南本部長は釈明したが、露呈したのは機長や副機長の悪行だけではない。2019年以降、不退転の覚悟で講じたはずの再発防止策が機能していないという経営の失態だ。

鳥取社長、赤坂会長の責任は重い。だが経営責任については広報部長が「経営トップからは、関連役員の処分も速やかに検討すると聞いている」と答えるのみだった。

変われない「事なかれ主義」

現場を知るあるJALのOBは、「安全対策は本質的な理解と共感がなければ浸透しない。管理強化の締め付けだけでは、上司の顔色をうかがう『事なかれ主義』に陥る」と指摘する。

赤坂氏はかつて飲酒問題の背景に「不都合なものに目をそらす事なかれ主義の横行があった」と自ら指摘し、「われわれは変わっていく」と明言した。しかし、5年が経ち、今回の業務改善勧告で求められたのはまたしても「社内意識改革」だった。

JALの経営の根深いところで機能不全が起きていると言わざるを得ない。その要因は何か。社外取締役を含むJAL経営陣には根本的な自己検証が求められている。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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