老舗バレエ団が動画配信、華やかさの裏の"現実" ロシア帰りのバレリーナが厳しい国内事情を告白

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谷桃子バレエ団のYouTube
(写真:YouTube「谷桃子バレエ団 / Ballet with soul」@tmbcompanyより)

ちなみにこのワガノワ・バレエ・アカデミーに、現地のロシア人が入ろうと思ったら、超厳格な身体検査があるという。そもそもバレリーナに適した骨格なのか、本人はもちろん、親御さんや親戚の遺伝的な情報まで徹底的に調べあげ、生まれながらの超エリートだけが入学を許されるそう。

入学後も全員が進級できるということはなく、最終的に卒業できるのは3分の1ほど。そんなバレエ猛者たちと一緒に練習をするのだから、上手くならないわけはなく、卒業後はロシアのバレエ団にプロとして入団が決まった。

谷桃子バレエ団を選んだ"意外な"理由

そんなすごい経歴のアリスさんが次のキャリアとして、なぜ谷桃子バレエ団を選んだのか。

「チケットノルマがないのが大きかったです」

チケットノルマ。よく芸人のエピソードトークで出てくるワードなので、僕にも聞き馴染みがあったが、この言葉がアリスさんの口から出てきたのは意外というほかなかった。

チケットノルマとは、出演者が本番前にチケットを一定数渡され、自らが営業マンとなり売り捌き、もし売れ残ればその分の損失を自ら被るシステムだ。

僕にはわからないバレエの専門的な話が飛び出してくるのではと身構えていたが、率直すぎるアリスさんの入団理由にどこか親近感を覚えた。就活の時に給与面の待遇を見て就職する会社を決める大学生となんら変わりない。

「関西から上京してきているから、東京に知り合いも少ない。チケットノルマがあると売るのが大変だと思って……」

芸人の世界同様、日本のバレエ界ではチケットノルマがあるのは当たり前だという。アリスさんがいた海外ではどうなのか。

「ロシアでもチケットノルマはあるんですか?」

「ないですよ。むしろ固定でお給料が出ます」

半分笑いながらアリスさんは言った。ロシアにチケットノルマがあるわけないじゃないですか、冗談よしてくださいよ――口にしないまでも、その半笑いにはそんなツッコミが含まれていたに違いない。

日本とロシア。国が変わるだけでなぜこんなに違うのか。アリスさんは続ける。

「海外、特にロシアではバレエを観るということが文化になっていて、日常なんです。日本人が映画を見るような感覚でバレエを観に行きます。だからわざわざバレリーナ本人がチケットを売らないといけないなんて考えられません。

ロシアのバレエ公演のチケットは、高い席だと1枚5万円くらいするのですが、それもすぐ完売します。チケットを取るのも一苦労です」

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