LGBTQ当事者が直面する、「体育会特有」の不安 『わたしたち、体育会系LGBTQです』書評

✎ 1〜 ✎ 129 ✎ 130 ✎ 131 ✎ 132
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
『わたしたち、体育会系LGBTQです 9人のアスリートが告白する「恋」と「勝負」と「生きづらさ」』田澤健一郎 著
わたしたち、体育会系LGBTQです 9人のアスリートが告白する「恋」と「勝負」と「生きづらさ」(田澤健一郎 著/岡田 桂 監修/集英社インターナショナル/1980円/224ページ)
[著者プロフィル]田澤健一郎(たざわ・けんいちろう)/編集者・ライター。スポーツ分野を中心に活動する。1975年、山形県生まれ。監修は立命館大学産業社会学部の岡田桂教授(スポーツ社会学)。

2024年夏のパリ五輪では、LGBTQの当事者であることを公表したアスリートが過去最多の198人だったという。数字の評価は読者に委ねるとして、本書の「性的マイノリティーの中でも、女性アスリートのほうがカミングアウトをしやすい環境にある」という指摘は、スポーツ界の「性」の規範の根深さを象徴する。

近代スポーツの発祥は19世紀英国、上流階級の男子が通うパブリックスクールにあるとされる。リーダーシップやチームワークを培う手段としてスポーツが重視された。

精神的素養や模範的行為を育む中で、スポーツは「男らしさ」という価値観と結びつく。ゆえに、たくましい理想の肉体の体現を求められる男性アスリートが、ゲイであることを公表するのはハードルが高い。それを裏づけるように、近年の夏季五輪に出場し、LGBTQであることを公表したアスリートのうち、生物学的な男性は約1割にすぎないとのデータがある。

関連記事
トピックボードAD