高速列車だけでない、日立「車両以外」の鉄道技術 AIで車内の不審物検知や施設のトラブル回避
HMAX導入によるメリットは、地上・車上双方における故障や不具合の大幅減少と、それに伴うメンテナンス費用の削減、事故や故障を未然に防ぐことによる遅延や運休の回避、といったことが挙げられる。HMAXは、すでに日立の車両が運行されているイタリアやイギリス、デンマークで先に導入されることになるが、設置に関して日立製の車両かどうかは問わないため、他国の鉄道会社への導入も期待されている。
また、冒頭で述べたとおり、日立は今年5月31日、フランスのタレスからGTS(グラウンドトランスポーテーションシステムズ)部門を買収完了した。この買収により、日立レールは世界51カ国で事業を展開することになり、売り上げの半分以上を信号システム事業が占めることになったが、そのタレス由来の技術として展示されたものの1つが、AIを使ったセキュリティシステムだ。
車内の「不審物」や忘れ物をAIで検知
車内に設置されたカメラからの画像をAIによって解析し、一定期間置きっぱなしのカバンなどがあれば、乗務員室のディスプレイが警告画面へと切り替わって、乗務員に伝える仕組みだ。不審物の検知はもちろんのこと、忘れ物の確認などにも活用できる。また、車椅子を検知した場合も、乗務員が速やかに対応することができるよう、同様にディスプレイを通じて伝える仕組みとなっている。
イノトランスに出展しているのは、鉄道車両や信号システムなどのメーカーだけではない。日立グループでは、スイスに本社を置き主にパワーグリッド(送配電システム)事業を手掛ける日立エナジーも出展した。同社は、鉄道向け変圧器の分野では業界でも指折りの存在で、前身であるABB(アセア・ブラウン・ボベリ)以来、40年以上にわたって供給を続けている。
また、そのブースに間借りする形で、日立インダストリアルプロダクツも展示を行っていた。同社は、鉄道車両用主電動機向けとしては世界で初めて製品化された、銅ダイキャスト回転子を展示。主電動機の構造がよりシンプルとなり、従来タイプと比較して約15kgの軽量化を実現したという。
鉄道というと、どうしても一般利用者から見て主役である鉄道車両へ目が向いてしまうのは当然のことであるが、鉄道業界はそれだけでなく幅広い技術、品種のメーカーが支えている。日立グループの鉄道ビジネスも「鉄道車両を造っている」だけではなく、さまざまなノウハウを持った技術集団である。世界各国の鉄道関係メーカーなどが集うイノトランスは、そういった鉄道業界について再認識する、よい機会でもある。
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