高速列車だけでない、日立「車両以外」の鉄道技術 AIで車内の不審物検知や施設のトラブル回避

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そこで実例などと共に、もう少しわかりやすく説明しよう。

鉄道の日常業務には、列車を運行して乗客や貨物を運ぶことはもとより、そのために必要な車両やインフラなどの点検・整備も含まれる。そのため、車両ならば数日~数カ月ごとに必要に応じて点検を行い、線路などインフラについては、新幹線の「ドクターイエロー」のように検測車両を走らせるなどして状態をチェックしている。

だが、それでも定期的な点検の合間に突然の破損や不具合が発生することはある。車両の点検も毎日細部まで行うのは難しく、線路の検測車両も毎日走っているわけではない。地方ローカル線など運行本数の少ない路線では数カ月~数年単位でのチェックとせざるをえないのも実情だ。

この対策として注目されているのがIoTだ。日立は一部の鉄道会社に対して、車両各所に設けられたセンサーからの情報を収集し、これを車両やインフラのメンテナンスへ活用するサービスをすでに開始している。

HMAX 解説
HMAXについて解説する、日立レールチーフテクノロジーオフィサーの我妻浩二氏(撮影:橋爪智之)

インフラ異常も車内トラブルもIoTで対策

だが、これまで走行中に収集したデータは、列車が車両基地へ戻ってから地上側へ送って処理していたため、その解析に最大10日間を要することもあった。HMAXは、エヌビディアとの協力により大量のデータを列車上でリアルタイムに処理、必要な情報のみをオペレーションセンターに送信することを可能にした。

NVIDIA HMAX
日立とエヌビディアの連携は「イノトランス」でも注目を集めた(撮影:橋爪智之)

例えばある列車のセンサーで「〇キロ地点の線路に小さなひびを発見」、別の列車で「△キロ地点の架線に微細な傷を検知」というデータが収集されたとすると、その情報は列車内で瞬時にデータ処理され、保線基地へ情報を送信。連絡を受けた保線基地は、必要に応じてそれぞれの場所へ向かい、トラブルの発生を未然に防ぐことができる。

車両そのものの状態監視も同時に行われ、それらの情報は同じように集積されたあと、車両基地へ送られることになる。車両基地へ戻った後、不具合の発生が予見される部品を先に交換することで、その後の営業中にトラブルが発生することを回避できるし、重大なトラブルとわかれば、運行中に車両交換の手配も可能となる。

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