しかし、今の子どもたちは、目にみえる学力を身に付けるために、塾や習い事で忙しく、まるで栄養ドリンクを飲みながら頑張っているようだと指摘します。
多様な人材が、教育の選択肢を増やす
各スクールの運営者は、元公立小中学校の教員経験者から、ビジネスパーソン、子どもが不登校になった経験を持つ母親まで実にさまざまです。
例えば、ASJ理事長の小針氏は、元ビジネスコンサルタント。自身の子どもの小学校入学を前に、子どもを行かせたい・子どもも行きたい学校が見つからず、ないなら創ろうと決意。
地球環境が危機に瀕する中、子どもたちが働き盛りになる2050年を念頭に、「どんな世界でもサバイブできる子を育てる!」をミッションに掲げて湘南ホクレア学園を立ち上げました。そして、「世界中のどこでも仲間をつくれる“コミュニケーションスキル”」「世界のどこでも新しいことをはじめられる“起業スキル”」「世界のどこででも暮らせる“アウトドアスキル”」を身に付けることを目指しています。
ちょっと毛色が違うのは、逗子オルタナティブスクールFRASCO。小学4年生から中学3年生までを対象としたスクールです。代表の中村真弓氏は、働きながら子育てをしていたが自身の働き方にモヤモヤし、ウェルビーイングを人生のテーマに生きようと決意して独立。
時を同じくして中学生の子どもが不登校になり、中学生は不登校になると行き場がないことを実感。中1ギャップを経験したことから小中学校接続の大切さを痛感し、小学4年生から中学3年生までのオルタナティブスクールを事業として立ち上げました。
どちらも、近隣の先輩格ヒミツキチ森学園を見学に行き、背中を押されて開校したスクールです。
インフィニティ国際学院中等部と高等部は、「世界で学べ」という理念のもと、日本と世界を舞台に生きる力を育むため、中等部では町全体を活用した全寮制タウンキャンパスで探究学習を、高等部では世界を旅しながら実践的なフィールドワークを通じて、子ども一人ひとりの個性を引き出します。社会に直結する力を育むスクールですが、その背景には世界を見てきたからこその危機感があるようです。
インフィニティ国際学院の伊藤氏は、「今は人類が初めて経験する変化の時代、安定の意味が逆転している」と言います。そして、自身が海外を旅して歩いた経験から、世界ではすでに大変化が起きていて、日本にもこれからその波がもっと激しく押し寄せてくる。その時に必要なのは、自ら学び、つかみ取っていく力だと訴えます。
スクールの理念に共感できるかが大事
一方、オルタナティブスクールを選ぶ保護者も、既存の学力観に疑問を持ち、子どもの個性を最大限に伸ばしたいと願っている人が多いと小針氏。
どんな子が合っているかという質問には、「一人ひとりに合わせていくので、不向きな子どもはあまりいないが、最も大切なのは、保護者が理念に共感できるかどうかだ」と言います。オルタナティブスクールでは、保護者も子どもを預けるという意識ではなく、スクールとタッグを組み、共にあゆむ姿勢がより重要になるのです。
卒業後の進路については、28年の歴史がある炭谷氏から、例えば探究の時間にひたすら穴を掘っていた子どもは外資系のコンサルタントに、「忘れ物キング」が世界レベルの「スーパーエンジニア」に、不登校だった少年が22歳で牧場の経営者になるなど、進路は多様。また世界を旅する学校、インフィニティ国際学院では、国内外の大学に進学していくケースが多いということでした。皆それぞれ自分の好きなことやりたいことを見つけているようです。
今回のフェスの参加者150名の属性は 教育実践者・教育関係者 と保護者が半々。教育業界以外の社会人や学生の参加もありました。
筆者が話をした保護者の1人は、広島在住の幼稚園児を持つ母親で、子どもが幼稚園になじめず、公立小学校への進学に不安があるが、近隣にはほかに選択肢がなく、よいスクールがあれば移住も考えたいと話していました。
子どもが育つ環境について真剣に模索する親にとって、オルタナティブスクールは前向きな選択肢の一つとなるのでしょう。
地方ほど選択肢は少ない、協力して第3の選択肢を増やす
しかし、地方に行けば行くほど、公立以外の選択肢はないのが実情です。
今回参加しいていた一般社団法人うみかぜ SOTOBOコミュニティスクールのレイブン澄さんも、千葉県一宮町在住で、自分の子どもに探究教育を体験させたいと思ったが、通えるところには多様な学びを提供するスクールがないので、思いを同じくする仲間と立ち上げたそうで、現在は週1回活動しています。このように、自分たちで立ち上げたいと考える人たちにとっても参考になるイベントでした。