高齢化・老朽化団地「理事長決め」の心理戦バトル "ポンコツ"の私が「理事長」を引き受けたワケ
ここで状況をもう一度整理しましょう。
全員“長” は嫌。
●理事会経験がある2代目理事2名→
Iさん:くじを戻し、理事長をまぬがれ、会計に決定
水野:暫定環境整備。理事長を押し付けられそうで崖っぷち
●理事会初参加の2代目理事4名→
Gさん:暫定書記。理事長に推薦されるも、決断できないうちにまぬがれそう
Aさん:話し合いで建物設備担当に決定
Hさん:くじ引きにより監事に決定
Cさん:仕事で欠席(このまま理事長はまぬがれそう)
●理事会初参加の転入者1名→
Bさん:くじ引きにより集会所に決定。状況が飲み込めない様子。
お年を召した方たちに無理をさせては健康にかかわる。
初参加の人たちに“長”を押し付けるのは忍びない。
「もはやこれまで」と腹をくくった私はついに「理事長を引き受けても構わない」という境地に達しました。
物は考えようです。50歳代にもなっていつまでもお父さんお母さん理事に甘えているわけにはいきません。私も区分所有者の一人として、いつかは重い役を担わなければならないのであれば、ベテラン理事も名を連ねている今年度はむしろ、チャンス。
今ならまだ団地内に自主管理時代の理事長経験者もいるし管理会社も付いています。教えてもらいながら実践すればいいじゃないか、と。
私が次に理事になるのは約10年後です。団地の世代交代が今よりもっと進み、初代からの蓄積がなくなってから、初めて理事長をやるとなったらもっと難しい。ポンコツ一人の力でできることは限られているからです。
「リーダーシップがなければメンバーシップを使え」
これは昔、私が勤めていた会社の上司からもらったアドバイスです。「ポンコツな私が理事長をやるなら、理事会の中に同志がいないと……」。ふと顔を上げると、目の前に座っていたA君がガンを飛ばしてきました。
昔から「溺れる者は藁をも掴む」と言いますが、その瞬間、私の頭の中にぱっとイメージが広がったのです。「異端児のこの子を押さえることができれば、きっと理事会をまとめられるに違いない」。脳内が混乱を極める中、ふと口を突いて出たのが、こんな言葉でした。
「私が理事長になったら、あなたは私を支えてくれますか?」
私は「支える」という言葉を「うっかり」ではなく「あえて」使いました。「支える」とは、「理事長という重い役目を引き受けるからにはそれなりの覚悟が必要。あなたも覚悟を持って一緒にやっていってくれますか?」という意味です。まるで交際0日のプロポーズ。初対面のA君に「嫌」と一蹴されたりしないでしょうか。
ところが、ところがです。A君は気楽に「うん」と即答したのです。びっくり。何にも考えていなさそうだけど、言質は取った。これって、もしかしてラッキーな展開?!
和を乱すのはA君じゃなかった
2月の日暮れは早い。2023年度の理事長を務めることになった私が外へ出ると、暗闇の中から拍手が沸き起こりました。
月明りに照らされて、団地の敷地を戻る道すがら、Fさんが話し掛けてくれました。
Fさん「耳が遠くなってしまって、さっきの話、半分も聞こえなんだ」
私「え?! そんなにお悪いんですか?」
Fさん「教えてほしいんやけど、今日来てないC君は何になったんや?」
私「私が当たってた環境整備を譲りました」
Fさん「そうか……」
役決めの一部始終をFさんに伝えている間に、A君の姿を見失ってしまいました。今後の理事会運営、本当に彼は私を「支えてくれる」のでしょうか? その話はまた後日……。
(文/水野康子)
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