国家のようで国家でない「謎の独立国家」の姿 『分離独立と国家創設』など書評3点

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『分離独立と国家創設 係争国家と失敗国家の生態』

・『お金から見るアメリカの運動部活動 活動を支える人と仕組み』

・『1杯目のビールが美味しい理由を数学的に証明してみました。』

『分離独立と国家創設 係争国家と失敗国家の生態』ジェイムズ・カー=リンゼイ、ミクラス・ファブリー 著/小林綾子 訳
『分離独立と国家創設 係争国家と失敗国家の生態』ジェイムズ・カー=リンゼイ、ミクラス・ファブリー 著/小林綾子 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・神戸大学教授 砂原庸介

国家であるとはどういう状態をいうのか。主権国家の要件として知られているのは、1933年のモンテヴィデオ条約で示された4つの特徴である。確定した領域、永住人口、政府の存在、ほかの国家と関係を取り結ぶ能力だ。高校の教科書などで主権・領域・国民が国家の三要素として説明されることもあるが、そこでは触れられない「ほかの国と関係を取り結ぶ能力」、これが本書の主題だ。

国家のようで国家でない 「謎の独立国家」の姿

国家がない地域に移り住んだ人たちが国家の創設を宣言する、という「原始取得」ははるか昔の出来事である(最後は1847年のリベリアらしい)。植民地への移住者が新たな国を創りたいと考えて宗主国から徐々に権限移譲される例(英連邦の加・豪・NZ)も現代には起こりそうにない。

第2次世界大戦後に活発になった脱植民地化は、多くの国の独立を促し、今も脱植民地化を達成していない自治領は17地域だという。ソ連やチェコスロバキアのように解体して新たな国家が創られたり、ドイツやイエメン、タンザニアのように複数の独立国が合併して1つの国家となったりもするが、これらは例外的な位置づけだ。

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