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「世界の鉄道をAIで変革する」日立の野望と現実 保守作業が劇的改善するが導入費用がネック?

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9月27日には、日立はコペンハーゲン市内の地下鉄を運営するコペンハーゲンメトロに対してエヌビディアの技術を活用したエイチマックスを提供する契約を締結したと発表した。日立はコペンハーゲンの地下鉄ネットワークの設計、製造、構築を請け負っており、同社の技術により無人運転システムが実現している。そこへエイチマックスも加わった。2025年末までに導入する計画だ。

こうした日立の果敢な動きに、イノトランスの会場にいた競合メーカーの社員は、「日立さんにかなり先行されてしまった。私たちは会場でメンテナンスビジネスの話ができないかもしれない」と、苦笑混じりに話していた。

だが、鉄道業界の未来が日立の思い描く通りになるとは限らない。エヌビディアとの協業によるエイチマックスの導入を阻む壁、それはコストの高さである。

日立はその金額を公表していないが、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、6月に台湾で開催されたコンピューター国際見本市「コンピュテックス」の会場で、「(同社製GPUを導入すれば)スピードアップは100倍だが、電力は3倍、コストは50%増えるだけだ」と語っている。100倍のスピードアップは確かに魅力的だが、その能力をフルに使いこなさないと1.5倍のコスト増と3倍の電力費増が重くのしかかる。

AI活用に懐疑的な声も

エヌビディアだけでなく、AI導入などのデジタル投資そのもののコストは無視できない。実は、イノトランスの会場で鉄道業界におけるデジタル化の流れに冷や水を浴びせるような発言があった。それもオフレコではなく、開会式で行われたシーメンス、アルストム、そしてスペインCAFという大手鉄道メーカーのCEOが一同に介したパネルディスカッションでの出来事である。

イノトランス初日のパネルディスカッションに登壇した欧州鉄道大手メーカーのCEOたちが本音トークを繰り広げた。左からアルストムのアンリ・プーパール・ラファルジュCEO、CAFのジャヴィエ・マルティネス・オジナガCEO、シーメンスモビリティのマイケル・ペーターCEO(記者撮影)

シーメンスモビリティのマイケル・ペーターCEOは前述のとおりエヌビディアと協業していることもあり、AI活用のメリットを積極的にアピールしていたが、アルストムとCAFはそうでもなかった。

CAFのジャヴィエ・マルティネス・オジナガCEOは「すべてのケースでAIが必要とされているわけではない。AIに何ができ、何ができないのかを見極めなくてはいけない」。アルストムのアンリ・プーパール・ラファルジュCEOも「AIにも電力は必要で、AIが鉄道の電力使用量を最適化したとしても、AIの活用で電力がさらに使われるようなことがあれば納得がいかない」と話した。

我妻氏は「導入コストよりも効果のほうが高くないと誰も買ってくれない」として、効果が高いことを強調する。さらに「カメラなどの機器になるべく汎用品を使ってコストも抑えている」という。しかし、問題は安全に関する鉄道事業者の考え方だ。データ解析に数日かかっても構わないのか、コストが増えてもいいからその日のうちに解析結果を知りたいのか。そこは鉄道事業者の経営体力によっても違ってくるだろう。よもやとは思うが、何をしたいかという理念もなくメーカーの言いなりにデジタル化を進めたら、コスト削減どころか高い買い物になりかねない。

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