「世界の鉄道をAIで変革する」日立の野望と現実 保守作業が劇的改善するが導入費用がネック?

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これまでは1日どころか、メンテナンス拠点でデータが処理されるまでに最大10日間かかることもあったという。「しかし、リアルタイム解析によって重大な故障の予兆を発見できれば、次の列車が来る前に列車を停めることができる。事故を未然に防ぐことができるわけです」。

エヌビディアとの協業によるエイチマックスは「今は架線の映像解析だけだが、将来は線路、車両、駅にも展開したい」と我妻氏は意気込む。エヌビディアのホームページでは、従来のデジタル保守サービス導入前と比較したエヌビディアとの協業によるエイチマックスの効果について、「旅客運用や保守運用などの車両運用にかかわる遅れを最大20%削減、車両のメンテナンスコストを最大15%削減、オーバーホールにおいて交換する部品の30%削減、車両基地における無駄なアイドリングをやめることでアイドリングによる燃料消費を最大40%削減」といった点を挙げている。

日立レール 我妻氏
日立レール車両部門チーフテクノロジーオフィサーの我妻浩二氏(記者撮影)

エヌビディアが鉄道に着目した理由

では、エヌビディアはなぜ鉄道分野で協業したのだろうか。自動車は鉄道よりも業界規模がはるかに大きいし、航空業界は非常に精密な保守作業が行われている。この点について、エヌビディアでデータセンタービジネス担当バイスプレジデントを務めるヨゲシュ・アグラワル氏は、「鉄道を車両単体でなくインフラも含めたシステムと考えると、自動車や航空よりもはるかに複雑であり、その維持には困難がつきまとう。そこでわれわれの出番があると考えた」と話す。

その点において、エヌビディアが協業するのは日立だけではない。シーメンスやドイツ鉄道とも協業して車両・インフラの保守、エネルギー消費量の削減など運行効率の最適化に取り組んでいる。鉄道分野はビジネスチャンスの大きい市場だと考えているのだ。

センサー取り付けの様子
センサーを車両に取り付ける様子(写真:日立製作所)

日立レールグループのジュゼッペ・マリノCEOは「今後5年で、エイチマックスによる収入を日立レールの収入の全体の1割になるようにしていきたい」と話す。たとえば、2024年度における日立の鉄道事業の売上高は1兆円超えが予想されている。この数字を当てはめれば、5年後にエイチマックスがもたらす収入は1000億円ということになる。なかなかアグレッシブな目標である。

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