1日1万歩は意味がない?10歳若返る歩き方のコツ 1万人に効果検証「インターバル速歩」の実力
――現在、どのくらい普及が進んでいますか。
18年間で、長野をはじめ、秋田、京都、東京、大阪などの一部自治体ほか、大学、老健施設、企業健保など全体で51カ所、累計1万人以上が5カ月間のインターバル速歩事業に参加しています。
最近では、同事業を現役・若年世代に拡大することを目標に、従来のシステムをスマホアプリ化しました。「インターバル速歩」というアプリで、無料版もあります。
さらに、インターバル速歩の効果の未来予測をするプログラムや、仲間が最近どこを歩いているかなどの情報を提供するプログラムの開発も進行中です。
これまで民間企業と共同で、栄養食品・健康機器の性能検証研究を実施してきましたが、今後、同アプリシステムを用いることで、検証に必要なデータ解析の効率化も期待できるでしょう。
さらに、アプリシステムが普及してより多くの現役世代が同事業に参加すれば、インターバル速歩による生活習慣病だけでなく、がんの発症リスクの抑制効果も明らかになるはずです。これは、生命保険会社には魅力的な研究テーマではないでしょうか。
私たちの最終目標は、抑制された医療費を原資とした健康サービス産業の創造です。国の財政に頼らない研究システムや健康社会を構築できたらと考えています。
加齢性疾患にもかからずに済む?
――新たな知見があればご紹介ください。
最近の研究によれば、加齢に伴う筋量の減少がミトコンドリアの機能を低下させ、それによって生じる活性酸素が慢性炎症を引き起こすと考えられています。その慢性炎症が、脂肪細胞に起これば糖尿病、動脈壁の免疫細胞に起これば動脈硬化・高血圧、脳細胞に起これば認知症・うつ病、がんの抑制遺伝子に影響が及べばがんになる、という説です。
この説に基づくと、運動によって筋力の低下を防ぎさえすれば、多くの加齢性疾患にかからずに済むと考えてよいことになります。
実際、私たちは、インターバル速歩によって、体力向上に比例して炎症やがんを引き起こす遺伝子群の活性を抑制すること、それに伴って生活習慣病の症状が改善することを明らかにしています。
今年度からは、住友電工グループ社会貢献基金の寄付により、信州大学医学部に「臨床スポーツ医学研究センター」を設立して、私の後任の増木静江教授がさらに研究を進めています。
医学部附属病院に通院するさまざまな加齢性疾患の患者を対象に炎症関連遺伝子群の活性を測定し、インターバル速歩による体力向上が遺伝子群に及ぼす影響を臨床症状と関連づけて解析します。
この研究結果は、現在の臓器別・服薬医療が、運動を核とする統合・非服薬医療に移行する契機になると考えています。
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