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「電気運搬船」はエネルギー変革の主役になれるか パワーエックス「世界初ビジネス」の勝算

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電気運搬船「Power Ark 100」のイメージ画像。2027年の第一船航行を目指す(提供:パワーエックス)

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パワーエックスは設立から5カ月後の2021年8月18日、初めてのニュースリリースで事業内容を明らかにした。リリースのタイトルには「蓄電と送電技術を進化し、電気を船で運ぶ時代を実現」と書かれている。そのために同社は岡山県玉野市で巨大な自社工場を稼働させ、船舶搭載用の蓄電池モジュールのテスト生産に乗り出した。連載第4回目(最終回)の今回は、パワーエックスが目指す「電気運搬船」の構想およびその実現可能性と課題について検証する。

2024年7月19日、パワーエックスはメディア関係者に、岡山県玉野市の臨海部に建設した自社工場の内部を公開した。

石膏ボード製造工場を全面的にリノベーションしたというその内部は、シルバーを基調に外からの光をふんだんに取り入れた斬新な作りだ。たくさんの柱や梁で支えられた真新しい工場は、あたかも万博の巨大なパビリオンのような趣だった。

「Power Base」(パワーベース)と呼ぶ自社工場ではこの日、将来、「電気運搬船」に搭載する予定の水冷式蓄電池モジュールのテスト生産が始まっていた。「セル」と呼ばれる、1個5.5キログラムもある外部調達した単電池20個をアルミ製の筐体に組み込み、蓄電池モジュールを製造。ロボットによる自動化ラインがゆっくりしたスピードで動いていた。

新型蓄電池に多重の安全対策

パワーエックスが電気運搬船搭載用として新たに開発した蓄電池モジュールには、熱伝導防止パネルやガス排出弁など、いくつもの安全装置が設けられている。

「蓄電池のセルには、もともと発火リスクのないリン酸鉄系のリチウムイオン電池が使われている。そのうえで、万一、セルが熱膨張してガスが出てきた場合でも、火災につながらないようにモジュール段階で多重の安全設計を講じている」(パワーエックスの伊藤正裕社長)

伊藤社長によれば、同社は「電気運搬船」という、世界でも実例のない構想の実現のために創業したスタートアップだ。

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